2021年8月1日(日)
主張
緊急事態宣言拡大
菅首相は根本から姿勢を正せ
政府は新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を6都府県に拡大することを決めました。5道府県には、まん延防止等重点措置を適用します。全国の1日当たり新規感染者数は29日に1万人を突破し、東京では31日に4千人を超えました。専門家は「経験したことのない感染拡大」と警鐘を鳴らします。最大の問題は菅義偉首相が危機感を持ち合わせていないことです。東京五輪を強行して誤ったメッセージを発し、根拠のない楽観論を振りまいています。この姿勢を根本から正さなければ危機を打開することはできません。
危機感持たないのは誰か
東京で今の感染拡大が続けば「通常であれば助かる命も助からない状況になる」というのが厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」の指摘です。首都圏全体が同じ事態に陥ることも懸念しています。「危機感を行政と市民が共有できていないことが、現在の最大の問題」といいます。
しかし菅首相は30日の記者会見で「国民のみなさんに危機感を持っていただくことがものすごく大事なことだ」と述べ、人ごととしか考えません。危機感を共有していないのは菅首相自身です。
五輪中止の検討すらせず、世界最大のスポーツ祭典を続ける一方、国民に「不要不急の外出を控えて」という矛盾した要請を続ける限り、説得力はありません。
政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は感染を増やしている要素として「コロナ疲れ」やデルタ株のまん延とともに東京五輪の開催を挙げています。五輪が感染の拡大要因となっていることは多くの専門家の共通した見解です。
にもかかわらず菅首相はいまだに五輪は感染拡大の要因ではないと言い張っています。自身のツイッターには、日本選手が金メダルを獲得するたびに祝いの言葉を書き込みますが、コロナについては、五輪開会以降、30日夜に緊急事態宣言拡大の書き込みをするまで、まったく触れませんでした。
緊急事態宣言の拡大を報告する衆参両院の議院運営委員会を菅首相はこれまで同様、閣僚任せにして出席しませんでした。記者会見では質問にまともに答えません。なぜ緊急事態宣言下で感染が急増するのかと聞かれても「人流が減っている」「ワクチン接種で高齢者の感染が抑えられている」と楽観的な見方ばかりです。人流は思うように減っていません。全世代へのワクチン接種が「第5波」に間に合わないことははっきりしています。感染拡大を許した責任を問われても、感染抑止が自分の責任だと開き直ります。
まず政府が責任を果たせ
首相が語れば語るほど、緊張を緩めるメッセージが拡散されているのは今の最大の危機です。根拠のない楽観論を政府の長が振りまくことほど有害な行為はありません。現状をありのままに説明することが大前提です。その上で、ワクチン接種、大規模な検査、休業を要請する事業者への十分な補償、医療機関への支援、そして五輪中止に政治がすべての手だてをとることが不可欠です。
政府が果たすべき責任を実際に果たしてこそ、呼びかけに協力して感染抑止に取り組もうという意識が国民に生まれます。危機感を共有しようとしない菅氏はあまりにも首相の資格に欠けています。