2021年7月27日(火)
一時支援金 支給認めて
「不備ループ」業者怒り
五輪開催の裏で、多くの業者が切り捨てられかねない事態が起きています。緊急事態宣言の影響で減収した業者に国が支給する一時支援金について、何度申請しても書類の不備を理由に支給されない「不備ループ」に遭っている業者が多数いるのです。「受給できなければ廃業だ。迅速に支給してほしい」と当事者たちは訴えます。(青柳克郎)
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「申請するたび『事業実態が確認できない』といわれる。一生懸命働いてきたのに、人生を否定されたような気持ちです」
愛知県で20年以上、卓球教室を営む女性(50)が話します。
かつて実業団で活躍。30人以上の生徒がいますが、今年の売り上げはコロナ禍前の半分以下です。5月に一時支援金を申請しましたが、不備通知を繰り返し送られています。
ネックになっているのは売り上げの証明。月謝を現金で受け取っているのに、通帳の写しを繰り返し要求されています。確定申告書や売り上げ台帳、教室の風景写真など、できる限りの資料を送っていますが認められません。
廃業も頭をよぎりましたが、生徒から「もっと教わりたい」と励まされ、料理の出前のアルバイトをして教室を維持しています。
「私にとって、支援金を受給できるか否かは、生きるか死ぬかの問題です。実態を見て支給してほしい」
一時支援金は、飲食店の時短営業や外出自粛の影響で今年1~3月のいずれかの売り上げが半減した業者に最大60万円を支給するもの。デロイトトーマツが業務を受託しています。57万件の申請に対し支給は48万件で、未支給は2割に迫ります(14日時点)。
全国商工団体連合会は14日、中小企業庁に「不備ループ」の是正を要求。行政手続法に基づき、審査にかんする情報の提供を求める150人分の要請書を提出しました。
書類提出10分後に不備通知
きちんと審査しているのか
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現金取引の業者に通帳の写しを求めている問題について、日本共産党の笠井亮議員は6月11日の衆院経済産業委員会で是正を要求。梶山弘志経産相は、ほかの書類で売り上げが確認できれば「できる限り払おうとやっている」と答弁しましたが、支給を拒まれるケースは後を絶ちません。
兵庫県でエステサロンを営む女性(44)も現金取引で、不備通知を5回も送られています。追加書類を出した10分後に再度の不備通知が来たこともあり、「きちんと審査しているのでしょうか? 事業実態を確認したいのなら、店を見に来ればいい」と憤ります。
家賃など固定費が月15万円ほどかかり、アルバイトに出て店を維持しています。「私の施術で『肌がきれいになった』『疲れがとれた』と喜んでくれるお客さんがいます。店を維持するための支援を急いでほしい。そもそも、ここまでコロナ禍が長引いているのは、徹底した検査などをしてこなかった国の責任が大きいのですから」
全商連が14日に行った中企庁への要請では、各地の業者らが「不備ループ」の実態を訴え、是正を求めました。「不備の是正方法を担当者に聞くと、『それは不正の手口を教えることになるので言えない』と回答された。受給する権利の侵害だ」「『青色申告の事業者だと提出書類が多いから、白色申告に変えて申請せよ』と指示された。実現できないことを求めるのは『申請するな』と言うのと同じだ」などと述べました。
東京商工団体連合会は19日、業者支援の強化を求めて都内で宣伝。「いますぐ五輪を中止にせよ」「営業や生活支援に力を注げ」と声をあげました。
共産党の田村智子副委員長は15日の参院内閣委員会で「1件の不正を防ぐために99件をあきらめさせる『過剰審査』をしているのではないか」と追及。改善を迫りました。
中企庁は「不正防止と両立させながら、どういう書類を提出すれば事業実態や緊急事態宣言の影響を確認できるのか、引き続き検討する」と答えました。