2021年7月25日(日)
五輪 感染の危険増
濃厚接触選手と対戦拒否できず
“プレーブック同意はリスクの許容”
政府文書入手
東京五輪・パラリンピックで、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者となった選手と試合をする選手が、対戦を事実上拒否できない仕組みになっていることが24日、本紙が入手した内閣官房の文書などから分かりました。濃厚接触者との試合は対戦相手を感染のリスクにさらすものであり、保健所関係者から懸念の声が出ています。(三浦誠)
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濃厚接触者の試合出場について、内閣官房と五輪組織委員会は15日に、五輪会場や合宿地がある都道府県の保健所などに向けオンライン説明会を開きました。内閣官房は、説明会で自治体側から出された質問について20日にメールで正式に回答。本紙はこの回答を入手しました。
説明会では複数の自治体から、「濃厚接触者との競技に同意しない選手がいた場合は、競技はどうなりますか? 濃厚接触者は不戦敗?」との質問が出ました。
組織委は、五輪への参加規則を定めたプレーブックで「一定の条件の下、濃厚接触者の競技参加は可能である旨明記されており、(プレーブックへの)同意が(五輪の)参加条件となっているので、同意しない選手はいないものと考える」と説明。プレーブックに同意したことで、自動的に濃厚接触者との対戦を強いられることになる形です。
また「選手は、プレーブックに同意することで、大会や試合を通して感染するリスクを許容している、という理解でよろしいでしょうか」という質問には、「貴見のとおりです」と肯定しています。
対戦選手が濃厚接触者かどうかについては、「個人名を特定して競技参加者に伝えることはない」としています。
五輪では柔道、レスリング、ラグビー、ボクシング、空手など選手同士が密接に接触する競技が多くあります。
ある自治体の保健所関係者は、「『プレーブックへの同意』が前提ですすめているが、選手は本当に理解しているのか疑問だ。仮に頭で理解しても、濃厚接触者が参加すれば選手はベストパフォーマンスが発揮できるのか。これで公正な競技といえるのか」と疑問を呈します。
内閣官房、組織委は15日に自治体に送付した「濃厚接触となったアスリート等の取扱い」で、試合開始6時間前のPCR検査で陰性になることなど試合参加の条件を提示しました。
前出の保健所関係者は「6時間前の検査で陰性になっても、その後に陽性とならない保証はなく、試合時点の感染性は否定できない。ナンセンスな考え方だ」と指摘します。