2021年7月14日(水)
英、規制解除も懸念
変異株猛威「時期尚早」
野党や科学者・医師ら批判
【フライブルク(ドイツ南西部)=桑野白馬】英国のジョンソン首相は12日、イングランドで実施されているマスク着用や社会的距離の維持など法的義務を伴う新型コロナウイルスの感染予防措置を予定通り19日でほぼ全面解除すると表明しました。変異株の猛威で感染者数が増加する中、全面解除に踏み出す国は初めてです。
ワクチン接種が進み、感染しても重症化しなくなったことなどを理由にしていますが、「アクセルを踏みながら、安全ベルトを外すようなもの」(野党労働党のアシュワース下院議員・「影の保健相」)などと批判も出ています。
ジョンソン首相はこの日の記者会見で、ほとんどの法的義務はなくなるものの、「情報に基づく個人の選択」によって感染防止に努めてほしいと発言。「慎重に進むことが絶対に重要だ」として、混雑した場所や狭い空間でのマスク着用を「推奨する」と述べました。また今後、政府が、在宅勤務を指示することはないが、職場への復帰は徐々におこなうべきだとしました。今後、感染を収束させていくためにはワクチン接種が重要だと指摘しました。
英国では1日当たりの新規感染者数は6日連続で3万人を超えており、5月下旬の約10倍です。
今回の措置に先立ち、国際的な科学者や医師ら100人以上が、医学誌『ランセット』で、規制の完全解除は「危険で時期尚早だ」と警告していました。同書簡は、「政府は、危険で不道徳的な実験に打って出ようとしている」と制限解除の中止を求めていました。これには、チャンド・ナグポール英医師会(BMA)会長、デービッド・キング元政府主席科学顧問などが名を連ねています。