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2021年7月8日(木)

主張

国際課税の合意

税逃れ許さぬ実効ある制度に

 国境を越えて活動する大企業の税逃れを防ぐ新しい国際ルールに日本を含む130カ国・地域が大枠合意しました。9~10日にイタリアで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で議題になる見通しです。2023年の実施をめざします。多国籍企業が世界で巨額の利益をあげているのに、各国の税制が対応できず、課税の抜け穴が生じていることは、国際社会が解決を迫られている課題でした。今回の合意は解決に向けた重要な一歩となります。実効ある制度にするために今後も国際協力が欠かせません。

「底辺への競争」に歯止め

 1日に大枠合意したのは二つの柱です。一つは法人税率の国際的な最低基準を定めることです。「底辺への競争」と呼ばれた大企業減税の競争に歯止めをかけます。

 1980年代以降、各国が海外からの投資呼び込みを狙って法人税率を競って引き下げました。法人税収が減ったことで各国政府の財源が浸食され、税の再配分機能が低下する一因となっていました。不公平税制が格差を拡大したことに批判が高まっていました。

 大枠合意では国際的な最低法人税率を「15%以上」としました。多国籍企業の子会社が税率15%未満の国で利益をあげ、低率の税を支払った場合、本社を置く国が最低15%まで上乗せして課税します。ある国が極端に低い税率を設けても、多国籍企業は本国で国際基準の税率まで課税されるので、各国が税率引き下げを競う意味が薄れます。タックスヘイブン(租税回避地)を利用した税逃れを阻止する効果も期待されます。

 もう一つの柱はデジタル課税です。

 子会社や工場を海外に置かず、インターネット上で事業を展開するIT大企業が海外で得た利益はこれまで課税の対象外とされてきました。代表的なGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)各社は多くの税負担を逃れながらコロナ危機の下で利益を2~3倍に増やしています。こうした利益をどう捕捉し、課税するか議論されてきました。

 大枠合意では、グローバル企業の売り上げと利益率を基に課税し税収を消費者のいる国に配分する仕組みを定めることにしました。

 経済協力開発機構(OECD)は、二つの柱が制度化されれば税収が800億ドル(約8・8兆円)程度増えると試算しています。国際協力によって多国籍企業への課税ルールに合意することは画期的です。各国で行われてきた不公平税制を正す運動が政府や国際社会を動かしました。

格差是正する仕組みを

 10月までに最終合意する方向です。残された課題もあります。国際課税を求める運動団体は、15%の最低法人税率は低すぎると批判しています。世界の法人実効税率が平均25%程度であることをみても引き上げが求められます。中国や一部新興国が経済特区を最低税率の例外とするよう主張していることも決着していません。

 今回、検討の対象になったのは法人税の法定税率ですが、大企業の実際の税負担を引き下げているさまざまな優遇税制にもメスを入れなければなりません。

 骨抜きを許さず、格差是正に役立つ税制とするために国際世論をさらに高める必要があります。


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