2021年7月7日(水)
土石流から72時間経過
熱海 なお29人の所在分からず
静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区では6日、土石流が発生してから、生存率が著しく低くなるとされる「72時間」が過ぎました。29人の所在が依然として分からないまま。現場では、まだ水と土砂が流れ続けています。(小梶花恵、津久井佑希、写真も)
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この日、被害の大きかった逢初橋(あいぞめばし)の近くまで立ち入ることができました。周辺は一面泥に覆われ木のにおいが漂っています。終始、水が流れる「サー」という音とヘリコプターの音が響き渡り、救助活動にあたる警察官や消防士らが行き交います。
逢初橋の手前には、規制線が。がれきや樹木が橋にせき止められ、橋の上には大きな岩が転がったままです。
「土石流の第1波はブルドーザーのような音だった。20分後の第2波では土石流の高さに驚いて記憶がない」。避難所から自宅の様子を見に来た女性(70代)は振り返ります。
家の外で音がしたため、3階からのぞくと、土石流が近くまで来ていました。出入り口をふさがれたため、地下から逃げようとしました。その時、第2波が来ました。「避難できず怖かった。(危険を伝える)携帯のエリアメールが何度も来て覚悟した。水道やガスが止まったので煮炊きもできなかった」。5日に警察が救助にきて2階の窓からはしごを使って避難しました。
「この先どうなるか」
逢初橋に近い高台に住む男性は、山の方から流れる茶色の水を指さし、こう語ります。
「川に見えるけど、普段は道路だよ。鉄道の橋脚がよく流されなかったと思う。水と泥が出続けて、まだ建物が押されている」
「熱海ニューフジヤホテル」には、被災者や危険箇所に住む住民が避難しています。
丹カトリンさん(53)は同市仲道町から娘(9)と避難しています。自宅は無事でしたが、崩れやすく危険といわれて避難しました。ホテルでは服や食事を出されていますが、下着や洗剤が足りないといいます。
カトリンさんはホテルで調理の仕事をしています。11日まで休んでいますが、「これからどうなるかわからない。友達は家を流されており、ゼロからやらないといけないので心配だ」と語ります。娘は残してきたペットのモモンガやリクガメが心配といいます。餌を多めに与えて避難してきました。
同じく避難している女性(78)は、「薬を自宅に忘れたので病院にもらいに行く」といいます。自宅は無事でしたが、道路ががれきや土砂でふさがれました。心配なため2日前から避難しているといいます。「ホテルの食事は、夜がバイキングだったけど、昼食は数種類のパンの中から一つ選べただけ。野菜不足なのでサンドイッチにした」と語ります。
夫(79)と妻(77)は、自宅の電気がつかず、水道も断水しています。「最初はパンやカップラーメンひとつという食事だったが、昨晩は避難先のホテルで調理した食事が出たのでよかった」と話しました。