2021年6月27日(日)
主張
リンゴ日報停刊
許されぬ中国による言論弾圧
中国当局に批判的報道を続けてきた香港の日刊紙、蘋果(ひんか)日報(リンゴ日報)が24日付で事実上の廃刊に追い込まれました。中国が制定した香港国家安全維持法(国安法)による弾圧です。創業者や幹部を同法違反容疑で次々に逮捕し、会社の資産も凍結して発行停止に至らせました。香港の言論の自由を踏みにじった中国政府の蛮行に強く抗議します。社会主義・共産主義と無縁な行為です。中国は人権保障の国際取り決めと「一国二制度」に背く人権弾圧をただちにやめるべきです。
政府批判の禁止をやめよ
国安法は中国・香港当局への批判を「国家分裂罪」「国家政権転覆罪」などとして禁止しています。最高刑は無期懲役です。昨年6月30日に中国が同法を施行してから香港の民主化運動と言論への弾圧が急速に強まっています。
報道機関に対してはジャーナリストの逮捕、調査報道部門の解体、取材記者の登録制度など抑圧を強化しています。中でも狙い撃ちにされたのが、民主化運動支持の論調を掲げてきた蘋果日報です。
創業者の黎智英(れい・ちえい)氏は「無許可で集会を組織した罪」で4月と5月にそれぞれ禁錮の実刑判決を受け服役中です。国安法違反容疑でも逮捕、起訴されています。有罪判決が出れば、収監がさらに長期化することは避けられません。
蘋果日報に対しては編集長ら幹部社員を国安法違反容疑で逮捕するとともに、関連会社の資産を凍結し運営資金を遮断しました。
同法は、「国家の安全を害する犯罪」に用い、または用いることを意図した財産を凍結することができると規定しています。判断は香港の治安当局に委ねられています。同社は経費をまかなうことも社員の給与を支払うこともできなくなり、発行停止を余儀なくされました。
中国政府は「法にのっとった職務執行」(外務省報道官)と正当化していますが容認できません。言論による政府批判を犯罪として禁止することは中国政府自身が署名、支持してきた人権保障の国際取り決めに背く行為です。
言論、報道の自由は人権保障の国際取り決めに定められた権利の一つです。中国が1998年に署名した国際人権規約の自由権規約は意見表明の自由を明記しています。口頭や印刷など自ら選んだ手段で情報、考えを伝える自由も含まれると規定しています。
香港の言論への弾圧は、97年に香港が英国から返還された際、中国が世界に公約した「一国二制度」にも反する行為です。香港の地位を定めた香港基本法は「高度な自治」を明記し、香港住民が「言論、報道および出版の自由」を持つとしています。ほごにすることは許されません。
人権の国際取り決め守れ
蘋果日報の停刊について各国が言論、報道の自由への弾圧として中国政府を批判しているのは当然です。今日の国際社会で、人権と基本的自由の尊重は国連憲章にも明記された普遍的なものです。
すべての人権と基本的自由を守り促進させることは、体制のいかんを問わず、国家の義務となっています。中国政府は国際社会の批判を「内政干渉」として拒むのではなく、自ら賛成してきた、人権保障の国際取り決めに沿って行動すべきです。