2021年6月22日(火)
「提言」無視し上限1万
政府・組織委など5者 五輪有観客方針を決定
東京五輪・パラリンピックの観客数について政府、大会組織委員会、東京都などは21日、5者協議を開き、全会場で定員の50%以内で1万人を上限とすると決めました。政府新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長らが提言した「無観客開催」を無視しました。感染拡大を防止し国民の命と健康を守るという政府、都の責任を放棄した決定です。(五輪問題取材班)
5者協議では、▽上限を会場収容定員の50%以内で1万人とする▽小中学生が観戦する学校連携は別扱いとする▽緊急事態宣言などが発動された場合は無観客も含め検討する▽パブリックビューイングは中止や規模縮小の方向で検討する―などを合意しました。
上限を超えた数のチケットが販売されている競技については再抽選するとしています。チケットは現在364万枚が販売されていました。再抽選をすることで約272万枚となるといいます。
チケット保有者と大会関係者をあわせると、期間中に約300万人の人出が起きることになります。専門家らは観戦による人出の増加と五輪の「お祭りムード」で気分が緩み感染が増えることを懸念しています。
政府は17日に、大規模イベントの開催基準として、定員50%以内、上限1万人を認めるという方針を決定。この時の会見で、尾身会長は「(上限1万人は)五輪とは分けて考えるべき。五輪はもう少し厳しくする」と指摘していました。18日には尾身氏らが提言で、無観客での開催が最も望ましいと要請し、観客を入れる場合でも大規模イベント開催基準を適用せず、「さらに厳しい基準に基づいて行うべき」と求めました。
組織委の橋本聖子会長は同日の会見で専門家の提言を無視した理由について問われ、「しっかりとした対応をすることで政府のイベント開催基準にのっとって開催できると判断した」と回答。提言で指摘された懸念事項をどうするかについて言及しませんでした。