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2021年6月21日(月)

主張

子どもの五輪動員

全ての自治体が中止の決断を

 新型コロナ感染のもとで100万人以上の子どもを東京五輪観戦に動員する―そんな無謀な計画をめぐるキャンセルが、さいたま市など数十自治体に広がりました。

 ところが、東京都内ではほとんど動きがありません。そのからくりを「しんぶん赤旗」日曜版20日号がスクープしました。5月末に五輪組織委員会が関係都県に出したキャンセル受け付けの文書を、都が隠ぺいし、都内の自治体に伝えていなかったのです。これでは自治体は動けません。ここまでして、子ども動員に固執する小池百合子都政の姿勢は異様です。

命と健康を危険にさらす

 子ども観戦の仕組みは3年前、国と都が関与する五輪組織委が決定し、近隣の都県が競技会場、チケット枚数などを市区町村に割り当てました。問題はその後、感染症の世界的大流行という情勢の根本的な変化が起きたにもかかわらず、以前の計画のまま進められていることです。

 しかし、今日の状況で子どもの観戦動員はありえません。

 インドで発見された感染力の高いデルタ株は世界で猛威をふるいつつあり、日本でもイギリスで見つかったアルファ株にとってかわることが予想されています。その時期に公共交通機関を使って多くの子どもたちが行き来したり、「3密」が避けられない駅や会場で待機したりすることは、間違いなく感染リスクを高めます。子どもたちは遠足や修学旅行、卒業式や部活動など本当に我慢してきました。部活動などの大会も多くが無観客です。五輪だけは別で感染リスクにさらすというのは、まったく説明がつきません。

 さらに、多くの競技が炎天下で行われるのに、コロナ禍のもとでの熱中症のリスクが考慮されていません。

 身長が低い子どもは地面の照り返しの影響が強く、体温調整の力もおとなほどありません。マスクをつけた観戦はさらに熱中症リスクを高めます。集団行動中の子どもの体調管理を行うには相当数のスタッフが必要ですが、ぎりぎりの人員で教育活動と感染対策を続ける学校に余力はありません。

 限界に達している医療現場は、確実に新型コロナ感染がふえる五輪に「もう無理!」と悲鳴を上げています。子どもの動員は、医療の負担を増やすことからも、ありえない選択です。

 誰が子どもの命と感染拡大防止に責任を負うのか、責任の所在も不明です。この間の経過から組織委が万全の対策をとるとは考えられません。各自治体もとても手が回りません。その一方、参加の責任は校長にあるといわんばかりの行政側の発言が各地であります。国と都の力で無謀な動員を行い、責任は現場に押し付ける―。まるで戦前の日本軍のようです。

力合わせ子どもを守ろう

 感染症がどうなろうと五輪ありきの菅義偉政権と小池都政から子どもを守る必要があります。参加を予定している教育委員会は参加をやめるべきです。首長も住民である子どもを守り、地域の感染拡大を防止する責任があり、中止を表明すべきです。組織委はチケットのキャンセルを23日までとしていますが、その後のキャンセルも認めています。全ての自治体に、子どもの動員中止の決断を促すため、今こそ力を合わせましょう。


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