2021年6月18日(金)
主張
緊急事態の解除
感染爆発防ぐため五輪中止を
菅義偉政権は17日、沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言を20日の期限で解除することを決めました。7都道府県を7月11日までのまん延防止等重点措置に切り替えます。専門家は、コロナ感染の減少が鈍化する地域があるとして、再拡大を警告しています。少なくとも東京都では宣言を解除できる状況ではありません。東京五輪開催のために感染リスクをさらに高めるような措置をとることは許されません。営業自粛を要請される事業者に十分な補償を迅速に届け、ワクチン接種と大規模検査で感染の封じ込めを図るべきです。
専門家の警告無視するな
現在の感染状況は予断を許しません。東京都などで新規感染者は前週比で下げ止まり、増加に転じる兆しすらあります。
菅政権は2度目の緊急事態宣言を、感染者が十分減らないまま、3月に解除し、感染再拡大を招きました。その結果、4月には3度目の宣言を出さざるをえなくなりました。今拙速に解除すれば、この誤りをまた繰り返すことになるのは目に見えています。
政府に助言する専門家からは五輪開催が感染を広げることに懸念の声が出ています。
16日に開かれた厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」では、国立感染症研究所などの専門家が、インドで見つかった変異株(デルタ株)の広がりによっては、7月前半、あるいは五輪期間中にも東京でまた緊急事態宣言が必要になる可能性があるとの試算を示しました。宣言を出さずに五輪に観客を入れた場合、無観客時と比べ、感染者が累計で最大1万人以上増える恐れも指摘しました。科学的知見に基づく警告を無視してはなりません。
政府は、重点措置解除後のイベント観客数の上限を1万人に緩和する方針です。五輪を無観客にしないことを想定しているのは明らかです。五輪会場外でも千人規模の観客を集めるパブリックビューイングが計画されています。人の流れの抑制、行動の自粛を求めながら1万人近いイベントは許容するなど、矛盾だらけの措置です。
政府の感染対策が支離滅裂になっているのは、五輪開催を前提にしているからです。菅首相は国会で「命と健康が守られなければ五輪を実施しないのが当然」と述べました。専門家は五輪開催が国民の命と健康を危険にさらすことをはっきり指摘しています。
五輪開催によって新たに亡くなる人が増えることなどあってはなりません。感染爆発を招いた五輪という歴史的汚点を残してはなりません。
迅速、十分な補償こそ
政府がなすべきこともせずに緊急事態宣言の発令、解除を繰り返した結果、飲食業者をはじめ業者や国民は疲弊しきっています。営業自粛の要請を続けるにあたっては十分な補償を速く確実に届けることが欠かせません。菅政権は持続化給付金、家賃支援給付金を1度だけで打ち切りました。医療機関への減収補填(ほてん)はいまだに拒んでいます。この冷酷な姿勢を根本的に改めなければなりません。
感染の「第5波」は何としても防がなければなりません。政府は今夏の五輪を中止し、感染抑止にすべての力を集中すべきです。それができないのであれば国政を担う資格はありません。