2021年6月11日(金)
2021都議選
都立・公社病院の独法化
「医療崩壊への道」
現役の看護師訴える
新型コロナウイルス感染症の患者をいち早く受け入れるなど社会的に大きな役割を果たしている都立・公社病院。小池百合子都政は独立行政法人化(独法化)を狙い、「稼ぐ医療」へかじを切ろうとしています。誰もが安心して医療を受けられる病院か、“もうけ優先”か―。都立・公社病院の独法化は、都議選の争点の一つです。(新井水和)
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「百何十人のコロナ患者の治療方針を医師1人で決めなくてはならず、残業時間は月300時間を超えています」。ある都立病院で働く看護師のAさんは、コロナ患者を受け入れる病院の実情を語ります。
コロナ対応深刻
コロナで医療現場がひっ迫し、収束の見込みがたちません。にもかかわらず、都はこれまで医療従事者の増員など医療体制を強化してきませんでした。
Aさんの病院では、診療科が細かく分かれており、看護師は専門的な知識や技術を身につけています。コロナ対応のためいくつかの科をコロナ病棟に変更。医師、看護師はローテーションでコロナ治療に当たります。患者も、別の科の病棟に移されました。
「他の科で働くことは専門性を伸ばすことも力を生かすこともできず、モチベーションを保つことが難しいです」とAさん。専門外の患者を診ることが、ストレスになることもあると言います。
現場は深刻な状況にもかかわらず、都は五輪開催を強行しようとしています。Aさんは「五輪は中止し、都は具体的な対策を打ち、医師が300時間も残業をするような実態を改善すべきです」と訴えます。
不採算医療後退
「独法化で都民の医療サービスの向上はあり得ません」とAさん。都立病院はこれまで感染症対応や救急、集中治療室(ICU)など赤字になりやすい医療を担ってきました。独法化すれば、このような不採算の医療は大きく後退します。
都立病院の財源は診療報酬と都からの年400億円の補てんです。不採算医療を確実に行う必要があります。都の予算のわずか0・5%しか占めていない400億円を、都民ファーストや自民党は「赤字」だとあおり、2022年度内の独法化を狙っています。
Aさんは「小池都政は、都民の命と健康を守るためにお金を使いたくないのだと思います」と批判します。
働く人の処遇も悪くなります。黒字経営が求められるため、効率化が優先されれば、人件費は削減。給料も減ります。労働条件が悪化すれば、働く人の勤続年数が短くなり、専門的な技術を持つ人が育ちません。
都は独法化後、「稼ぐ医療」のため海外の富裕層向けに都民の医療資源を優先的に振り向ける「医療ツーリズム」の実施を検討していることが、日本共産党都議団の追及で明らかになりました。
Aさんは強調します。「独法化が進んでいる大阪では、医療崩壊の危機に直面しています。独法化は医療崩壊への道です」