2021年5月28日(金)
きょう世界月経衛生デー 各国で取り組み
生理の貧困 沈黙破る
生理をめぐる不平等に目を向け、ジェンダー平等を実現していこう―世界各地で取り組みが進んでいます。「世界月経衛生デー(5月28日)」を前に世界各地でイベントが取り組まれ、コロナ禍でさらなる苦境に置かれる人々に支援を強め、「生理の貧困をなくそう」と交流しました。
社会進出進める
@ヨーロッパ
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欧州では、すべての人が生理用品を入手できるよう、「生理の貧困」の解消を目指し、草の根団体が活発に活動しています。「世界月経衛生デー」を前に、英バーミンガムシティ大学では26日、オンライン討論会で課題を語り合いました。
英国では、14万人近くの学生が生理用品を入手できず、学校を休んだ経験を持ちます。英スコットランドでは昨年11月に生理用品を無償提供する法律が成立。英政府は今年から生理用品を非課税とし、問題解決に向けた動きが出始めています。
バーミンガムシティ大学のジェマ・ウィリアムズ主任研究員は、経済支援だけでなく「生理についての社会の理解を促す取り組みや、女性の社会進出の観点からアプローチする必要がある」と話しました。
国際NGO「プラン・インターナショナル」は、「生理の貧困」には▽生理用品の購入費▽月経衛生・健康についての教育の欠如▽生理にまつわる羞恥心、スティグマ(負の烙印=らくいん=)、タブーの存在―の三つの要素があるとしています。問題の根本解決のためには、教育や社会的な認識の変化が必要だと指摘します。
ウェールズのミルフォードヘブン中等学校のジェマ・ベイカー氏は、教育現場で生理を扱う取り組みを進めていると紹介しました。学校では生徒、保護者、教師をまきこんで生理用品を持ち寄る「ランチ会」を実施。参加者には生徒が学校で無償提供されている再利用可能な生理用品を手渡し、意見を交わす機会を設けました。「みんな抵抗なく話ができるようになり、タブー視されなくなった」と言います。議論を重ねていたおかげで、コロナ禍で学校の閉鎖が決まった際も、生理用品を各家庭に配布するプロジェクトが迅速に開始されました。
国際団体「パンデミック・ピリオド」創設者のジェニー・マーティン氏は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にあるジェンダー平等の実現のためにも、「生理の貧困」への対処が必要だと語りました。英慈善団体「ブラディー・グッド・ピリオド」の2020年の調査では、27%の女性が仕事中の生理について「会社の理解を全く得られていない」と回答しています。マーティン氏は、職場で生理に関する知識や理解を深め、女性が社会進出しやすい環境を整えることが大切だと指摘しました。(ベルリン=桑野白馬)
政治の優先課題
@アジア・アフリカ
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アジア、アフリカでは、国連児童基金(ユニセフ)などが共催し、オンラインイベントで月経衛生教育に携わる活動家らが交流しました。
西アフリカ・中央アフリカ地域では、初の「月経衛生シンポジウム」(25~27日)をオンライン形式で実施。26日には「若者への月経衛生教育」をテーマに議論しました。
ギニア政府代表は、「生理に関するタブーが根強い」うえ、生理用品の入手が困難で学校ではトイレ設備も十分に整備されていない環境から、サハラ以南では10人に1人が生理中は学校に通えていないと指摘。「少女たちにとって調和のとれた開発が必要で、月経衛生は最優先にされなければならない」と語りました。
ブルキナファソ、ナイジェリア、ベナン、ギニア、セネガルで月経衛生教育に携わる若い活動家が報告。どの国でも▽タブーを破り、生理に関する正しい知識を広めること▽学校施設での衛生的な水やせっけん、生理用品の確保―が共通課題として語られました。ブルキナファソのジュリエットさんは「全ての子どもが学校で学ぶ機会を得るべきです。少女たちの生活環境の改善には、少年・男性も含めて取り組みを強めたい」と語りました。
ユニセフは、東アジア・太平洋地域で「月経衛生週間」(21~27日)としてオンラインセミナーを実施しました。ユニセフの代表は、コロナ禍の影響で月経衛生教育に支障が出ている実態を報告。支援を強める必要性を強調しました。(鎌塚由美)
広がる無料配布
@日本
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今年の世界月経衛生デーは、日本でも、生理用品の無償配布が進む中で迎えます。今年3月4日、20代でつくる「#(ハッシュタグ)みんなの生理」が公表したオンラインアンケートが日本社会に衝撃を与えました。5人に1人の若者が、「金銭的理由で生理用品を買うのに苦労した」というのです。
これを機に、国会や地方議会で「生理の貧困」についての論戦が活発化。3月8日の国際女性デーから5月27日までの期間に、生理用品の無料提供の取り組みを公表した自治体は100をはるかに超えています。
その一つ、千葉県松戸市の男女共同参画センター「ゆうまつど」を、世界月経衛生デーを前に訪れました。入り口ドアに向かって右側に「生理用品の無料配布について」の案内板。もはや、生理のことはタブーではなくなりつつあると実感します。
「これまで声を上げるに至らなかった人が、(生理用品の用意に困っていますと)声を上げることができるようになった。生理用品の入った袋には、市の相談窓口の案内も入れて、支援につながるようにしています」。市の男女共同参画課の宮島吉恵課長は力を込めます。特に、配布場所15カ所のうち9カ所を子どもや若者が立ち寄る公共施設にしていることにふれ、「子どもへの支援につなげたい」と話します。
新日本婦人の会は47都道府県の170の自治体に働きかけ、学校のトイレに生理用品を置いてほしいと要望しています。神奈川県大和市では、議会で予算がつき、4月26日から、全小中学校のトイレに生理用品が置かれています。また、京都市では、5月議会に提案された補正予算で、小中高校、総合支援学校での生理用品の配布が具体化されています。(武田恵子)
世界月経衛生デー 全ての人の月経衛生・健康を促進するための日として、▽沈黙を破り、生理に対する否定的な社会の意識を変えよう▽月経衛生を政治の優先課題に―と国際NGO「WASHユナイテッド」が2013年に提唱。平均的な月経期間(5日)、周期(28日)から5月28日に。同日を「世界月経衛生デー」として祝う取り組みが14年から続いています。事務局WASHユナイテッドによると、21年は700超の国際・政府機関、NGOや民間企業が参加します。