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2021年5月25日(火)

志位さんと語る学生オンラインゼミ「社会は変わるし、変えられる」 詳報

豊かな個性が全面的に花開く

科学的指針を持って生きよう

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(写真)オンラインで全国から寄せられた質問にこたえる志位和夫委員長

 日本民主青年同盟が23日に開催した「社会は変わるし、変えられる―志位さんと語る学生オンラインゼミ」での、全国の学生と日本共産党の志位和夫委員長との主なやりとりを紹介します。

共産主義の具体的イメージは?

 ゼミの前半は、五つの学生班からの質問に志位氏が答えました。

 長野の学生班からは、社会主義・共産主義社会について、「絵空事のように感じてしまう。具体的なイメージを教えてほしい」との質問が出されました。

 志位氏は、「労働時間がうんと短くなる社会です。そのことによってすべての人間が自らの能力を自由に全面的に発展させることができる社会です」と答えました。マルクス・エンゲルスが『共産党宣言』で述べた「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような一つの結合社会」という言葉を紹介し、「各人の自由な発展」が「万人の自由な発展」――社会全体の発展に素晴らしい力を与え、それが個々人の自由な発展をさらに豊かに進める好循環を生むような社会になると説明しました。

 志位氏は、社会主義・共産主義ではなぜ労働時間の抜本的短縮が実現するかと問いかけ、(1)生産手段の社会化で人間による人間の搾取がなくなること(2)資本主義につきものの浪費がなくなることを示しました。

 そのうえで志位氏は「もう一つ強調したいのは、資本主義のもとでかちとった自由と民主主義の制度、人間の豊かな個性など価値あるものをすべて引き継ぎ、花開かせる社会になるということです」と語りました。

 長野の学生からは「社会主義への移行期に金や権力への執着を捨てられるか」との再質問が。生産手段の社会化によって生産の動機が「利潤を増やすこと」から「社会全体をよくすること」に変われば「人間の価値観も変わっていくのではないか」と答えた志位氏に、学生は「人間の価値観も変わっていくというのは画期的な考え方だと思いました」と述べました。

コロナ対策で必要なことは?

 広島の学生班は「緊急事態宣言の効果がどれだけあるのか。どんなコロナ対策が必要か」と質問しました。

 志位氏は、「日本のコロナ対策は失敗した」とズバリ。「ただすべき二つの大問題がある」と指摘しました。第1に、科学に基づく「封じ込め」戦略がないとして、PCR検査の抑制やワクチン接種体制の遅れなど、「封じ込め」にとって一番の科学的基本に真剣に取り組んでこなかった日本政府を批判しました。第2には「失敗から謙虚に学び生かす姿勢がない」と指摘。党として政府に緊急要請を行い安全・迅速なワクチン接種、大規模検査、十分な補償の3本柱で封じ込め戦略の実行を求めたことを紹介しました。

 また、学生への補償についての質問には、困窮した学生への給付金の複数回の支給、給付奨学金・学費半減、大学でもPCR検査を大規模に取り組みキャンパスで交流できる条件を整えていく必要性を訴えました。

巨額の借金をどうとらえ、どう解決するか?

 「医療や福祉予算を拡充してほしいけれど、日本は借金があると言われる。どう捉えて解決したらいいか」と問いかけたのは愛知の学生班です。

 志位氏は、日本の長期債務の残高は1158兆円、対GDP(国内総生産)比で216%と、OECD(経済協力開発機構)の国々で断トツに多くなっていると指摘。「なぜ借金が作られてきたか」として、社会保障費を上回るお金を公共事業につぎ込んできたことや、大企業や富裕層への減税が行われてきたことが原因だと指摘しました。

 解決の方法として、「GDP比で借金残高は低下していく」方向に進む必要があると語りました。その際、コロナ対策は一時的な支出であり、命を守るために必要な対策は借金を増やしてでも行う必要があると強調。そのうえで社会保障や消費税減税の財源は「税の集め方、使い方」の改革で確保するとして、大企業や富裕層への優遇税制をただし、軍事費や大型開発など予算の浪費にもメスを入れ、暮らしをよくすることで経済成長を実現し、税の増収を図っていく展望を語りました。

政治のことを話しづらい空気をどう変える?

 京都の学生班は、食料支援活動を通じ、社会への関心を寄せる学生がいると感じるものの、自分の周りでは政治のことを話しづらい空気があると述べ、「どうすればそういう空気を変えられるか」と尋ねました。

 「二つメッセージを送りたい」と応じた志位氏。一つは、「『あなたのせいじゃない』と言っていこう。自己責任論を乗り越え社会的連帯を広げていこう」と話しました。「自助」を強調する菅義偉政権のもと、少なくない学生が「自己責任論」に苦しめられている現状がある一方、コロナ危機のなかで、高すぎる学費や学生を使い捨てる労働など政治の責任も見えやすくなっている状況があると語りました。

 もう一つは「『社会は変わるし、変えられる』。この希望を伝えること」です。志位氏は、同性婚を認めないのは違憲とする札幌地裁判決を勝ち取ったことなどをあげ、「ジェンダー平等へむけ巨大なうねりが起きている」と指摘。さらに世界史に目を向ければ、20世紀に起こった「世界の構造変化」―植民地体制の崩壊と100を超す国が独立を勝ち取った変化が「ある種の革命」(トーマス・ハイノッチ・オーストリア国連大使)と言われる核兵器禁止条約発効に力を発揮していることを紹介し、「社会は変わるし、変えられる。でも自然に変わるのでなく、人民のたたかいによって変えられるという希望を語っていこう」と呼びかけました。

社会科学の理論の真実性は何によって確かめられるか?

 東京の学生班からは「社会科学は、自然科学に比べて理論の実証性に劣るという批判があるが」との疑問が出されました。

 志位氏は、社会科学の理論の真実性は「社会と経済の現実の運動によって確かめられる」と話しました。マルクスは『資本論』で資本主義のもとでの貧富の格差の必然的な拡大や、自然と人間との「物質代謝」の「かく乱」を指摘したが、それは今日の世界的な格差拡大や気候危機・感染症の多発など環境破壊で実証されていると紹介しました。

 「同時に、社会を変える法則―社会変革の法則は自動的には進みません。人民のたたかいがあって初めて社会変革は実現します。これが自然の法則と社会の法則の大きな違いです」と強調しました。

 戦前、日本共産党と、民青の前身の日本共産青年同盟が掲げた国民主権と反戦平和の正しさが、戦後、日本国憲法に主権在民と恒久平和が書き込まれたことで歴史によって証明されたとも指摘。「私たちが掲げる綱領の真実性も、たたかって綱領を実現することで確かめられていく。そういう立場でがんばりたい」と訴えました。

野党共闘の現状と展望は?

 ゼミの後半は、全国の学生から寄せられた質問を司会が問いかける形で進められました。

 最初の質問は「野党共闘はどこまで進んでいるか。連合政権で意見が合わない場合はどうするか。共通政策が実現した後はどうするか」でした。

 志位氏は、4月の衆参補選・再選挙で野党統一候補が全勝し、立憲民主党の枝野幸男代表との党首会談で「総選挙での協力に向けた協議開始」で合意したことを紹介。「対等平等」「相互尊重」を基本姿勢として貫き、「共通政策」「政権のあり方」「選挙協力」の3分野で協議を進めていきたいと述べ、政権問題で前向きの合意ができれば「国民に野党の本気度が伝わり、情勢の前向きの変動がつくれる」と強調しました。

 また「新しい政権がつくられたならば、一致点を大切にして発展させていきたい」として、安保条約や自衛隊、天皇の制度など党独自の立場を持ち込むことはしないと強調。野党間には安保法制廃止・立憲主義回復をはじめ暮らしと経済、民主主義、平和、原発、ジェンダー平等などさまざまな分野で一致点がありこれを大切にしていきたいと力を込めました。

 共通政策が実現した後どうするかという質問には、「一般論として言えば、国民に信を仰いで、国民多数の意思を踏まえて進めていくのが民主政治の原則だと思う」と話しました。

アメリカ依存からの脱却のために何が必要か?

 「軍事的・経済的にアメリカ依存から脱却するために何が必要か」との問いに志位氏は、「二重の取り組みが重要です」と語りました。

 まず「日米安保条約の賛否を超えて緊急する課題で協力していく」とし、安保法制の廃止、辺野古新基地建設の中止、日米地位協定の抜本改正など一致点を大切にしていくと述べました。

 同時に、「日米安保条約を廃棄し、対等・平等の日米友好条約を結ぶという国民多数派をつくるために努力していくことが大事です」と強調しました。

 志位氏は、在日米軍は「海兵遠征軍」「空母打撃群」「遠征打撃群」「航空宇宙遠征軍」という、日本防衛とは無縁の海外の戦争への「殴り込み部隊」で構成されていると告発。「安保条約をなくして本当の独立国と言える日本をつくることこそ、日本の平和と安全を守る道だ」と述べ、「安保廃棄の流れを強めることは緊急課題を実行する上でも一番の推進力になる」と語りました。

北東アジアで平和の協力体制がつくれるか?

 第3の質問は「北東アジアでも東南アジア諸国連合(ASEAN)のような話し合いのテーブルをつくるというが、本当に実現できるのか」です。

 志位氏は、あらゆる紛争を平和的話し合いで解決するASEANのTAC(東南アジア友好協力条約)に学んで、「北東アジア平和協力構想」を2014年の第26回党大会で提唱したことを紹介。「困難はあるが、十分実現性がある提案です」と答えました。

 2011年にインドネシアで開催された東アジアサミット(EAS)で調印された「バリ原則」では、TACが掲げる平和原則がすべて入っていることを紹介。EASにはASEAN10カ国に加えて、日本、中国、韓国、米国、ロシア、インド、オーストラリア、ニュージーランドが参加して採択されており、「バリ原則」を条約にすれば実現は可能だと述べました。

普通に就職してまともに暮らしていけるか?

 次に「このまま日本に住んでいて経済はよくなるのか。普通に就職してまともに暮らしていけるでしょうか」という切実な問いかけが。

 志位氏は「日本経済は『ルールなき資本主義』といわれるように、国民の暮らしと権利を守るルールがないか、あっても弱い。経済のまともな発展にも大きな障害となっています」と指摘。日本とヨーロッパの比較一覧を提示し、労働時間はフランスより年600時間長く、40年働くとして1000日拘束されている計算で“懲役3年”だと指摘すると、驚きの声が上がりました。

 志位氏は、暮らしと権利を守る「ルールある経済社会」を築くため、法律などで大企業の横暴勝手を規制し、大企業にふさわしい社会的責任を果たさせる「大企業の民主的規制」を提起しました。

 マルクスが『資本論』で「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」が資本のスローガンで、社会により強制されなければ労働者の健康と寿命に「何らの顧慮も払わない」と述べていることを紹介し、その必要性を強調しました。

ジェンダー平等は資本主義の枠内で達成されるか?

 最後の質問は「ジェンダー平等は資本主義の枠内で達成されるのか。社会主義でどうなるのか」でした。

 志位氏は、綱領でジェンダー平等を資本主義の枠内での民主的改革の課題と位置付けていることを強調。「ジェンダー平等は資本主義の枠内でも最大限追求されるべき課題です。同時に、根本的には、社会主義・共産主義に進めば、より全面的に実現することができるようになるという展望をもっています」と述べました。

 エンゲルスがマルクスの晩年のノートをもとに著した『家族・私有財産・国家の起源』で、女性解放の条件として(1)法律的平等だけでなく社会的平等が大切である(2)「女性の公的産業への復帰」―公的活動への参加が決定的な意義を持つ(3)家事が女性に押し付けられている現状を打破する社会変革が必要(4)不平等の経済的基盤を取り除いてこそ両性の対等・平等な関係が実現する―をあげていると紹介。「エンゲルスは、これらの実現を社会主義的変革のなかに見いだしましたが、現実の世界史は資本主義の枠内でジェンダー平等が実現する方向に大きく進みました」と話しました。

 同時に、志位氏は、社会主義・共産主義は、あらゆる搾取や抑圧がなくなり、あらゆる支配・被支配の関係=権力関係がなくなる社会だと強調し、「ここまで進めばジェンダー平等がより全面的に実現する社会になるという展望を持っています」と述べました。

 全国からの質問に答えたあと、フリートークで「日本は地震も多く原発が大丈夫なのか不安。なくしていくことは可能ですか」「国防は必要だと思う。自衛隊は批判しつつも、日本の安全をどう確保するのか」などの質問が出され、これらにも志位氏は丁寧に答えました。

“漂流でなく、羅針盤をもって航海を”

 最後に志位氏が学生の皆さんへのメッセージを贈りました。

 志位氏は、戦前・戦後、日本共産党のリーダーを務め、今日の党の基礎を築いた宮本顕治さんが戦前の獄中から妻の百合子さんに送った手紙の一節を紹介。「人生を漂流しているのでなく、確乎(かっこ)として羅針盤の示す方向へ航海しているということは、それにどんな苦労が伴おうと、確かに生きるに甲斐(かい)ある幸福だね」とつづっているとし、確固とした科学的指針をもって生きることにこそ幸福があるという宮本氏の言葉を贈りたいと語りました。そのうえで志位氏は、「今日、その一端をお話しした科学的社会主義の立場と日本共産党綱領こそ、若い皆さんの生きる羅針盤となりうるものだと確信しています」とし、民青への加盟、日本共産党への入党を呼びかけました。


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