2021年5月8日(土)
主張
緊急事態宣言延長
五輪中止し感染対策に集中を
菅義偉政権が、新型コロナウイルス感染「第4波」を受けた緊急事態宣言を31日まで延長し、対象地域を6都府県に拡大することを決めました。大型連休前、「強い措置を集中的に」と言って3度目の緊急事態を宣言したにもかかわらず、感染拡大を抑えられなかった首相の責任が問われます。期限を延長しても感染抑止の道は見えません。行動を制限される国民の疲弊は限界に達しつつあります。政府は対策が効果をあげなかったことを反省し、今度こそ、あらゆる力をコロナ収束に集中しなければなりません。
深刻な現実を踏まえよ
菅首相は感染が減少していないことを指摘されても「人出は減少した」と述べ、現実を直視しません。全国の重症者数は1100人を超え、ほぼ連日、最多を更新しています。変異株による感染が拡大し、早期に重症化するケースが増えています。
大阪府では必要な医療を受けられない「医療崩壊」が起きています。助かる命が体制整備の遅れで失われていることは重大です。大阪への医師派遣など、政府が全国レベルの広域連携を後押しすることが急務です。医療の危機は大阪以外にも広がっており、国の支援強化は待ったなしです。
PCR検査数は緊急事態宣言中も1日平均約6万人と、厚生労働省が公表している1日最大20万件の検査能力と大きな開きがあります。感染封じ込めのため大規模検査に力を注ぐことが不可欠です。
ワクチン接種の立ち遅れは深刻です。医療従事者にも高齢者にもいまだに行き届かず政府は完了までの具体的行程を示せません。接種率は国際的に異常な低さです。
コロナ対策と東京オリンピック・パラリンピックの今夏開催が両立しないことは宣言の延長によっていよいよ明らかです。多くの医師、看護師や病院を五輪に動員することは危機的な医療体制にさらに重荷を負わせます。医療への負担を理由にホストタウンを辞退する自治体も相次いでいます。
菅首相が開催の判断を国際オリンピック委員会(IOC)に丸投げしていることは無責任の極みです。開催国の政府として、国民の命を守る立場からただちに中止を決断する時です。
菅政権は中小事業者に過酷な営業制限を要請しながら、緊急事態宣言の延長にあたっても補償をしません。酒類を提供する飲食店は書き入れ時の連休も休業し、宣言明けの営業再開を期していました。補償なくさらに休業を要請することは倒産、廃業してもいいということに等しい行為です。演劇、コンサートなどの「無観客」要請も批判を浴びています。文化芸術団体は科学的根拠のない休業、時短、客席減の要請をやめるよう求めています。当然の要求です。
補正予算案をただちに
国民の財産権を保障し、私有財産を公共のために用いる場合は「正当な補償」をすると定めた日本国憲法に照らしても政府の姿勢は不当極まるものです。補償とともに持続化給付金、家賃支援給付金の再支給に踏み出すべきです。
国民の命と暮らしを守るためにこれ以上の失敗は許されません。政府が国民に我慢ばかり求める姿勢を根本から改め、補正予算案を編成して抜本的対策に乗り出すことが必要です。