2021年5月2日(日)
主張
ミャンマー軍支配
菅政権は断固とした態度とれ
2月1日のミャンマー国軍によるクーデターから3カ月がたちます。粘り強い国民の抵抗に国軍は残虐な武力弾圧を強め、犠牲者は700人を超えたと伝えられます。国軍の暴挙は断じて許されません。欧米諸国はクーデターを認めない立場から制裁を科しています。日本政府はクーデターを非難しますが、国軍への姿勢は明確さを欠いています。政府開発援助(ODA)の中止をはじめ断固とした態度で臨むべきです。
日本国民の税金が軍に
現地では昨年の総選挙結果に基づいて国民民主連盟(NLD)の政権復帰を求める不屈の運動が続いています。国軍は重火器まで使って制圧を図っています。人権団体によると、中部の都市バゴーでデモ参加者ら80人以上が1日あまりで殺害されました。軍事法廷では死刑判決が相次いでいます。国軍に批判的なテレビ局は免許を剥奪されました。民主派が設立した「国民統一政府」に対して国軍は対話を拒否し非合法化しました。
国軍がクーデター後に設置した「国家統治評議会」の報道官は「木が成長するためには雑草を取り除かなければならない」と述べて弾圧を正当化しました。
菅義偉政権はクーデター後、新規のODAは供与しないと発表しました。しかし現在実施中のODAは停止していません。援助の実態が不明な中国を除けば、日本はミャンマーに対する最大の経済援助国です。円借款と無償資金協力合わせて60件約8000億円、技術協力22件に上ります。クーデターを非難しても援助を続けたのでは無法を容認しているとみられても仕方ありません。
ミャンマーでは国軍が所有、経営する企業が大きな力を持ち、ODAの対象事業に加わって利益を得ています。ODAの原資は日本国民の税金です。それが市民を虐殺している国軍に流れ、資金源となるのは許しがたいことです。
防衛省は国軍に協力する「能力構築支援事業」を中止せず、今も日本語教育への援助が行われています。国軍から防衛大学校への留学生も受け入れています。防衛省は「相互理解と信頼関係を増進する」として今後も続ける考えを変えません。
菅政権は「事態の沈静化、民主的体制の早期回復に向けてどのような対応が効果的か検討したい」としています。もはや検討の段階ではありません。
国軍が1988年にクーデターを起こし民主化運動を弾圧したとき、日本は5カ月後に軍事政権を承認し、ODAを一部再開して国際的に批判を浴びました。この誤りを繰り返してはなりません。
国際社会の結束に役割を
何よりも必要なことは国際社会が一致して弾圧の停止、NLD政権の原状復帰を迫っていくことです。東南アジア諸国連合(ASEAN)は首脳会議で暴力の即時停止や特使受け入れをミャンマー国軍に要求しました。国連安全保障理事会は、デモ隊への暴力を非難し、民主的政権移行を支持する議長声明を出しましたが、国軍に強い態度を打ち出すことに中国が反対しているため、安保理決議は採択できていません。
ミャンマーと強い関係を持つ日本が、国際社会の結束に貢献していく立場に転換することが緊急に求められます。