2021年4月26日(月)
国軍の暴力 即時中止を
ASEAN首脳会議 ミャンマー問題を協議
出席の司令官に迫る
【ハノイ=井上歩】東南アジア諸国連合(ASEAN)は24日、ジャカルタのASEAN事務局でミャンマー問題を協議する臨時の首脳会議を開きました。ASEAN各国首脳は、会議に出席したミャンマー国軍のミン・アウン・フライン総司令官に対して直接、暴力の即時中止を要求。会議はミャンマー国軍に実行を求めていく項目について、ASEAN首脳の合意をとりまとめました。
5項目の要求合意
インドネシアのジョコ大統領は会合で、「ミャンマーの状況は受け入れられないものだ」と言明。ミン・アウン・フライン氏に対し、▽国軍による武力行使の中止と緊張緩和▽全政治犯の即時解放と包括的な対話の開始▽ASEANからの人道援助受け入れ―を約束するよう迫りました。ジョコ氏が会議後の会見で明らかにしたもので、他の加盟各国首脳とも一致した考えだとも指摘しました。
会合ではマレーシアのムヒディン首相、シンガポールのリー・シェンロン首相も暴力の中止、民主派を含む全当事者との面会をASEANに認めることなどを要求。議長国ブルネイが同日発表した議長声明で、これらを含む5項目がASEAN首脳の合意として発表されました(別項)。
ミン・アウン・フライン氏の反応について、ムヒディン首相は会議後、「私や他の加盟国の提案を拒絶しなかった」と説明。リー首相は同氏が「ASEAN代表団の訪問や人道援助に反対ではない、建設的にASEANと関与するつもりだと語っていた」とシンガポールのテレビCNAに明らかにしました。
ミャンマー国軍側は5項目合意に明確な拒絶を示さなかった一方、約束もしなかったとみられ、暴力中止をどれほど守るかは未知数です。外交筋によると、首脳会議を呼びかけたインドネシアは、対話開始や人道援助の前提として第一に暴力の停止に同意させることを目指していました。
複数の首脳が求めた政治犯の解放は、最終的に5項目合意に含まれませんでした。「外国人を含む全政治犯解放の呼びかけがあった」ことが議長声明に盛り込まれました。
民主派が設立した国民統一政府(NUG)の報道官ササ氏は24日、ASEAN合意を歓迎。「ミャンマー国民の民主主義と自由の回復に向けた断固とした行動を期待する」と述べ、ASEANの関与を前向きに受け入れる考えを示しました。
■ASEAN首脳会議の5項目合意
(1)暴力が即時中止され、全当事者が最大限自制
(2)国民の利益にかなう平和的解決へ全当事者の建設的対話を開始
(3)ASEAN特使が対話プロセスを仲介
(4)ASEANが人道援助を提供
(5)ASEAN特使と代表団がミャンマーを訪問し、全当事者と面会
(ハノイ=井上歩)