2021年4月22日(木)
黒人殺害元警官に有罪
遺族側「歴史的転換点」
米フロイドさん事件 陪審団が評決
【ワシントン=島田峰隆】米中西部ミネソタ州ミネアポリスで昨年5月に起きた黒人男性ジョージ・フロイド氏=当時(46)=の暴行殺害事件をめぐる公判で、地元裁判所の陪審団は20日、第2級殺人などの罪に問われていた白人元警官デレク・ショビン被告(45)に対して、すべての罪状について有罪評決を言い渡しました。遺族を代表するクランプ弁護士は「歴史的な転換点になる」と強調しました。
ミネアポリスにある裁判所の前には評決言い渡し前から大勢の市民が集結。有罪評決が発表されると「黒人の命は大事だ」「フロイドに正義を」などと書いた旗やプラカードを振って歓声を上げました。
クランプ氏は「今回の評決を構造的な人種差別と抑圧を乗り越える先例にしよう」と述べました。
陪審団は、計画性はないものの意図的に死亡させた第2級殺人、殺意なしに著しく危険な行為で死亡させた第3級殺人、過失致死の三つの罪状について、それぞれ有罪と認めました。陪審員は白人6人と、黒人4人を含む人種マイノリティー6人の計12人。満場一致で有罪としました。量刑は今後、裁判官が決めます。第2級殺人罪では最高で40年の禁錮刑となります。
バイデン大統領はハリス副大統領とともに演説。「正義に向けた歩みの巨大な一歩だ」と歓迎しました。
3月29日に始まった公判は今月19日に最終弁論を終えました。
検察側は、手錠をかけられた状態のフロイド氏の首を被告が9分29秒にわたって膝で押さえつけたと指摘。フロイド氏が「息ができない」と繰り返し訴えた事件発生時の映像を示し、被告の行為は「警察行為ではなく殺人だ」と強調しました。
弁護側は、被告は警察の方針に従って行動したとし、「合理的な警察官」だったと主張しました。
正義求める声が後押し
【ワシントン=島田峰隆】フロイド氏殺害をめぐる元警官への有罪評決は、人種差別の克服と正義を求める米国内外の世論が後押ししたものです。今回の有罪評決を機に、米国社会が構造的な人種差別をなくす方向へ歩みをさらに進められるかが課題となります。
米国では警官が職務中に市民を殺害しても、有罪評決どころか起訴されることさえまれです。フロイド氏の事件では被告が執拗(しつよう)に首を膝で押さえつける映像がSNSで拡散し、全米に怒りと抗議が拡大。黒人と白人が連帯してデモ行進し、行動は1968年の公民権運動指導者キング牧師暗殺時以来の広がりを見せました。
抗議の波は世界に広がり、欧米諸国による植民地支配や奴隷制について反省や補償を迫るうねりとなりました。「世界が見ている」―。公判を見守った市民は、裁判所前にこう書いた横断幕を掲げ、正義を求める世論にこたえるよう訴えました。
一方で課題は多く残っています。人権団体の調査では、公判が始まって以降の期間だけでも毎日平均して3人が警官に殺害されています。犠牲者の半分以上は黒人か中南米系です。コロナ禍で失業など経済的被害を不釣り合いに受けているのも有色人種です。
ミネソタ州のワルツ州知事(民主)は「フロイド氏への真の正義は本当の構造的な変革を通じてのみ実現できる」と指摘しました。