2021年4月16日(金)
基地原告情報も提供対象
デジタル法案質疑で田村議員が告発
参院審議入りしたデジタル関連法案の質疑の中で、防衛省が、行政機関が保有する個人情報を加工して民間事業者に利活用させる仕組みを使って、国を相手取って米軍横田基地の夜間飛行差し止めなどを求めた訴訟の原告の情報を外部に提供しようとしていたことが明らかとなり、問題になっています。日本共産党の田村智子議員が14日の参院本会議で告発しました。
政府は、各省など行政機関が保有する一定の「個人情報ファイル」について、民間事業者に向けて、利活用する事業の提案を募集しています。特定の個人が識別できないように加工することが前提とされており、2016年の行政機関個人情報保護法の改定に基づく制度です。17年度に始まりました。
昨年12月、防衛省が利活用の提案を募集した個人情報ファイルには、「横田基地夜間(飛行)差止等請求事件ファイル(訴訟原告名簿)」など同裁判に関わるものが15本もありました。
これらのファイルには、氏名、住所、年齢、生年月日、控訴の有無、陳述書の提出の有無、損害賠償金額やその内訳も記されており、極めて機密性の高い文書です。提供までに非識別加工がされるとはいえ個人が識別されることも十分危惧されます。原告団・弁護団は3月、直ちに提案対象ファイルから削除し、原告らの情報を訴訟外で一切利用しないことを強く求める申し入れを防衛省に行いました。
田村氏が14日の質問でこうした実態を取り上げ、「国の情報集約が国民への監視、市民活動の萎縮につながる重大な事案だ」と提案募集の取り下げを厳しく求めると、菅義偉首相は、防衛省では21年度は同「提案募集を行わない」と答えました。
人権侵害を上塗り
「第2次新横田基地公害訴訟」の奥村博原告団事務局長(日本共産党昭島市議)の話 募集に気づいたのは今年に入ってからですが、違法騒音による人権侵害を上塗りする自己情報コントロール権侵害のとんでもない行為です。匿名化するといっても、訴訟を起こされたことで国が知り得た原告の個人情報を防衛省が勝手に何かのデータとして使ってくださいと民間に売りに出すなどということが許されるはずがありません。
第2次訴訟は二審判決が確定しましたが、新たな訴訟も準備しています。被害住民がためらわないためにも、提案対象からの削除が当然です。