2021年4月15日(木)
主張
熊本地震から5年
教訓踏まえ命守り抜く対策を
熊本・大分両県で震災関連死を含めて276人が犠牲となった熊本地震の発生から5年です。2016年4月14日夜の「前震」と16日未明の「本震」は、熊本県益城(ましき)町ではともに震度7を記録しました。同一地域で約28時間の間に震度7を2度観測したことは観測史上初めてでした。熊本県を中心に多くの家屋が倒壊するなど被害は甚大でした。深刻な影響は今も続き、困難を抱えている被災者は数多くいます。支えを必要とする人への支援の継続・強化とともに、地震の教訓を踏まえた防災対策を進めることが求められます。
人権と尊厳の保障不可欠
強い揺れが何度も続いたことが被害を拡大しました。前震で避難していた人が自宅などに戻ったところを本震に襲われ、犠牲になったケースも少なくありません。住宅倒壊は全壊8600棟以上を含め20万棟を超えました。避難所に指定された施設も多数が使用不能になり、電気、ガスなどライフラインも広範囲で寸断されました。
体に感じる地震がおさまらないため、避難所に入ることを恐れ、自家用車で暮らす「車中泊」が相次ぎました。体を自由に動かせない生活で「エコノミークラス症候群」になる被災者も続出しました。壊れた自宅の駐車場などにシートなどを張って暮らす「軒先避難」も増加しました。避難所以外の場所で暮らす被災者にいかに支援物資や情報を届けるかは、どの災害でも共通する課題です。
被災後のストレスや健康悪化などによる震災関連死は220人を超え、直接死50人の4倍以上です。地震で助かった命が避難生活の中で失われたことは重大です。災害のたびに関連死が出る事態は一刻も早く打開しなければなりません。人間らしい避難環境の整備を推進することが急務です。避難所のプライバシーの確保、温かく栄養バランスのとれた食事、衛生などについて政府は指針を示しています。自治体任せでなく、現場で確実に実現できるよう政府は責任を果たすべきです。避難者の健康を守るためのきめ細かな対応は、コロナ禍での安全な避難体制を整えるための土台にもなります。
ジェンダー平等の視点の取り組みも欠かせません。内閣府男女共同参画局の熊本地震についての調査では、被災24自治体のうち発災後1カ月以内に避難所で女性更衣室を整備したところは半数以下でした。女性専用の物干し場の確保は1自治体です。女性が困難な状況に置かれていたことを改めて示しています。一方、益城町の避難所では、女性の代表を中心に運営の改善が図られました。内閣府は昨年、「災害対応力を強化する女性の視点」とするガイドラインを発表しました。女性の安全と人権・尊厳が守られるよう防災・避難の体制改善を促進する時です。
被災者に寄り添ってこそ
仮設住宅には現在400人以上が暮らし、住まいを取り戻せない人も残されています。住宅再建のための被災者生活再建支援法を拡充し支援額と対象を拡大することは切実な要求です。災害公営住宅に住む被災者を孤立させないための相談・支援の強化も急がれます。
日本には分かっているだけで約2000の活断層があります。どこでも大きな地震が起きる危険があります。災害から国民を守る政治の姿勢が問われています。