2021年4月6日(火)
米各州で投票権抑圧
大企業・スポーツ界 反対の声広がる
【ワシントン=池田晋】120年ぶりの歴史的な高投票率で共和党のトランプ氏を破ったバイデン米大統領(民主党)の当選以来、各州で投票権を抑圧する立法の動きが共和党の主導で進んでいます。昨年11月の大統領選で激戦の末、民主党が制した南部ジョージア州では3月25日に州法が成立。市民の運動を受け、大企業やスポーツ界も立法に反対の声をあげ始めています。
共和党が主導
ジョージア州法は、▽郵便投票の用紙請求期間を半分に短縮▽身分証明の厳格化▽投票用紙投函(とうかん)箱の設置数の削減▽投票待ち有権者の列へ水・食料の配布禁止―などを新たに規定。都市部の非白人層の居住区では、長蛇の列に長時間並ぶことも珍しくなく、少数派の投票を狙い撃ちにし、さらに困難にするものとの批判があがっています。
同様の法律は中西部アイオワ州でも成立。米シンクタンクのまとめによると、3月下旬時点で47州の議会で計361本の投票抑圧法案が提出されています。
市民団体は連携して、ジョージア州に本社を置く大企業に州法への反対を明確にするよう運動を開始。これを受け、中立の態度を取っていたデルタ航空やコカ・コーラのトップらは声明で、州法を「受け入れ難い」「支持しない」と表明しました。
また、米大リーグ機構(MLB)は4月2日、7月のオールスター戦の開催地を同州アトランタから変更すると発表。MLBトップのマンフレッド氏も声明で、「大リーグは投票制限に反対する」と述べました。
こうした全米規模での投票権の抑圧の背景にあるのは、トランプ前大統領が根拠なく続けた「選挙不正」主張。共和党は「不正」防止を口実に立法を進めており、トランプ氏は「ジョージアは前回大統領選の茶番から学んだ」と州法を歓迎します。
バイデン大統領は、昨年の大統領選の結果は票の再集計や多くの法廷闘争を経て正当性が確認されたものだと指摘。南部州でかつて人種隔離を正当化した州法の総称「ジム・クロウ法」になぞらえ、「21世紀の人種差別法だ」と強く非難しています。
与党・民主党は、期日前投票や郵便投票の拡大を州に義務付ける、包括的な選挙改正法案を連邦議会下院で先月に可決。上院では議席数で野党・共和党と拮抗(きっこう)しており、審議は与野党の真っ向対立が予想されています。