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2021年4月3日(土)

主張

香港選挙制度改悪

強権的な民意排除許されない

 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会が香港の選挙制度改変を3月30日に可決しました。先に全人代が行った決定の具体化です。民主化勢力の立候補を阻む仕組みを何重にも張り巡らしました。半数を有権者の直接選挙で選んできた立法会(議会)に中国中央政府と香港政府の意にかなった人しか立候補できなくなり、中国による強権的統治を批判する民主派が徹底的に排除されます。国際的な人権保障の取り決めを踏みにじる制度改悪であり、許すことはできません。

民主派を徹底締め出し

 主な内容は▽立法会の直接選挙枠を定数の約2割に縮小▽行政長官を選ぶ選挙委員会がすべての立法会議員候補を指名する▽治安警察も加わって候補者の「資格」を審査する▽審査結果に異議があっても訴訟を起こせない▽選挙委員会に中国政府の意向の通りやすい人物を増やす―などです。行政長官はこれまで通り、選挙委員会による選出とします。

 資格審査では、中国、香港政府への批判を「国家分裂」などとして禁止した「香港国家安全維持法」(国安法)に適合しているかどうかが基準になるため、民主派は立候補すら妨げられます。

 資格審査を通り、直接選挙で立法会議員に当選したとしても予算案や条例案に反対すれば議員資格を取り消される恐れがあります。

 香港の地位を定めた香港基本法は行政長官と立法会議員全員を有権者の直接選挙で選出することを目標に選挙制度の改革を進めるとしています。今回の制度改悪はこれを完全に裏切るものです。中国が香港住民と世界に約束した香港の「一国二制度」をほごにする行為です。

 香港では近年、中国、香港当局による人権弾圧に反対する運動が大きく盛り上がりました。2019年には犯罪容疑者の中国本土への移送を可能にする逃亡犯条例改定案を撤回に追い込みました。議員のほぼ全員が直接選挙で選ばれる区議会では同年の選挙で民主派が8割の議席を獲得して圧勝しました。香港住民の大多数が民主化を望んでいることは明白です。

 これに対して中国当局が直接介入して弾圧に乗り出しています。昨年6月には国安法を制定し、多くの市民を逮捕しました。選挙制度の改悪はそれに続くものです。

 現行制度のままでは次の立法会議員選挙の直接選挙枠で民主派が前進することが見込まれたため、選挙制度を変えて、中国当局を支持する勢力で立法会を独占しようということです。民主化運動を葬り去ろうとする暴挙です。

 中国が香港で行っている行為は、人間の自由、平等をめざす社会主義とまったく相いれず、「共産党」の名に値しません。

「国際法守れ」の声こそ

 中国は世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言など一連の人権保障の国際的取り決めに賛成しています。国際人権規約の自由権規約には自由な選挙の権利も明記されています。賛成した以上、中国政府には順守する国際的な義務があります。国際社会からの批判を「内政干渉」と拒否する中国政府の姿勢は通用しません。国際法に反し、自由と民主主義、人権を抑圧する中国に対して国際法を守れと要求する声を世界で強めていくことが何より必要です。


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