2021年3月20日(土)
ミャンマー 独立系新聞発行止まる
ジャーナリスト拘束17人
ネットで抵抗
【ハノイ=井上歩】クーデターに対する国民の抵抗運動やデモに国軍が激しい弾圧を続けているミャンマーで17日以降、独立系新聞の発行が止まりました。メディア状況の後退がさらなる人権状況の悪化につながることへの懸念が高まっています。
独立系メディア「ミャンマーナウ」は、17日の「スタンダードタイム」紙の休刊で独立系5紙すべてが発行を停止し、「短かった報道の自由の時代が終わった」と報じました。
ミャンマーでは2011年以降の民主化で報道の自由が拡大し、12年に事前検閲を廃止。新しいメディアが次々と誕生しました。14年には報道の自由の権利を保障する法律も制定されました。
しかしクーデター後は、国軍の統治機構が刑法の扇動罪の適用範囲を拡大するなど一変。独立系メディア「フロンティア・ミャンマー」によると、15日までに39人のジャーナリストが治安当局に逮捕され、うち10人が扇動罪で訴追されました。
依然17人のジャーナリストが拘束下にあり、解放の条件にデモを配信しない誓約書への署名が強制されているといいます。
国軍は今月8日、日刊紙「セブンデイ」やミャンマーナウを含む民間報道機関5社の免許をはく奪。一部が発行停止に追い込まれました。
ミャンマーナウは「報道を継続すれば投獄や殺害の危険があるが、国軍の非道な犯罪を取材し続ける」(編集長)と表明し、主にインターネットを通じて報道を継続。軍政の正統性を認めないメディアや記者の多くが、弾圧に屈せずに報道活動を続ける姿勢を示しています。
大規模な抗議デモの様子や治安部隊の蛮行を市民が動画や写真でとらえ、SNSで発信してきたのも今回のミャンマーの抗議運動の特徴。しかし国軍側は3月に入り、モバイル通信とネット通信の遮断・制限をいっそう強化。情報の発信量は大きく低下しています。
抗議運動に関係する19日までの市民の死者は計224人にのぼるとされます。地元メディアは、デモ参加者に対する暴力が増加するにつれ、報道や情報発信への弾圧が激しくなっていると指摘しています。