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2021年3月17日(水)

主張

香港選挙制度改変

権利奪う中国の無法許されぬ

 中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)が香港の選挙制度改変を決めました。候補者の資格審査制度を新設し、民主派をはじめ中国当局の意に沿わない人を立法会(議会)議員の直接選挙から排除する仕組みを導入します。今でも直接選挙は一部に限られ、住民の選挙権、被選挙権が大幅に制限されています。今度は直接選挙に自由に立候補する権利を奪います。昨年の「国家安全維持法」(国安法)制定に続いて香港住民の基本的人権を蹂躙(じゅうりん)し「一国二制度」を形骸化させる暴挙です。

立候補から排除の仕組み

 現行制度では定数70の立法会議員を住民の直接選挙と職能別団体の選挙で半分ずつ選びます。今回の決定では定数を90に増やし、業界や各級議員の代表から成る選挙委員会による指名、職能団体の選挙、住民による直接選挙の3通りで選ぶこととしました。直接選挙枠が減らされる恐れがあります。

 重大なのは「資格審査委員会」を新たに設けて、行政長官と立法会の選挙にあたって候補者をふるいにかけることです。決定文書は「愛国者と香港を愛する者による香港統治」を掲げ、候補者が香港基本法や国安法に適合しているかどうかを審査するとしました。

 中国当局と香港政府はこれまでも「愛国者による香港統治」の名で民主化運動を弾圧してきました。昨年11月には香港政府が全人代常務委員会の決定を受けて民主派立法会議員4人の議員資格を剥奪しました。国安法は、中国指導部や香港政府への批判を「国家分裂」「政権転覆」などとして禁止している法律です。昨年6月の施行以来、多くの市民が同法違反容疑で逮捕されています。

 国安法との適合を資格要件とすることで、中国当局を批判する人が立候補できなくなり、立法会が中国いいなりの行政を追認するだけの場と化してしまいます。

 香港の「高度な自治」を定めた香港基本法は立法会について、普通選挙の枠を順次増やし最終的に全議員が普通選挙によって選出されるようにすると定めています。行政長官も最終的に普通選挙で選ぶことを目標としています。全人代の決定はこの規定に真っ向から違反します。

 これは単に内政問題ではありません。中国政府が1998年に署名した国際人権規約の自由権規約は、意見表明の自由とともに、すべての市民が差別や不合理な制限なしに直接、自由に代表を選ぶ権利を明記しています。中国は締約国としてこの条項を履行する義務を負っています。

 平和と民主主義をめざす各国人民の長期にわたるたたかいによって勝ち取られてきた国際的な人権規定を踏みにじることは社会主義とまったく相いれません。

圧政反対の声を世界から

 一国二制度はもともと台湾との統一に向けて中国指導部が打ち出した原則です。習近平国家主席も中台統一にあたって「平和統一、一国二制度」を堅持すると述べています。しかし、香港基本法で「50年間変更しない」と世界に約束した一国二制度を紙くずのように投げ捨てたのでは台湾住民からも信頼されません。

 香港住民から政治的権利を奪う圧政を許さないとの声を世界で上げ、中国指導部の無法を国際世論で包囲していく必要があります。


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