2021年3月13日(土)
主張
NTT政治家接待
際限なく広がる疑惑は深刻だ
NTTによる総務省をめぐる高額接待は、幹部職員にとどまらず総務相や副大臣ら自民党の政治家にまで及んでいたことが11日発売の『週刊文春』の報道で明らかになりました。名前が挙がった総務相経験者らは会食の事実を認めました。疑惑は文字通り底なしです。閣僚などが関係業者から接待されることは大臣規範に反します。接待の席で職務権限にかかわる話が出ていれば、収賄罪につながりかねない問題です。通信行政がゆがめられた疑いは一層深まりました。国会での徹底解明が急務です。
総務相や副大臣が次々と
『文春』によれば、総務相在職中に接待されたのは野田聖子・自民党幹事長代行(2017年11月と18年3月の2回)、高市早苗衆院議員(19年12月と20年9月の2回)です。場所はいずれもNTTグループの迎賓館でした。総務副大臣経験者では坂井学内閣官房副長官(18年6月に1回)、寺田稔衆院議員(20年9月に1回)です。
過去7年間では同迎賓館で接待された総務省政務三役(大臣、副大臣、政務官)経験者は十数人にのぼり、1人の費用は酒代込みで3万~5万円に設定されていたといわれます。通信行政に関係する自民党政治家がNTT接待にどっぷり漬かった実態が浮かびます。
野田氏は「仕事についてはほとんど話していない」と述べ、高市氏は「(許認可などに関する依頼は)皆無です」などと主張します。しかし、関係業者と接触する際、「国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」とした大臣規範に照らせば逸脱は明白です。野田氏は1回分の飲食代を支払わず、坂井、寺田の両氏は全額NTT側の負担でした。武田良太総務相は自らのNTT接待の有無さえ答えません。疑念は膨らむばかりです。
見過ごせないのは、18~20年の3年間の政務三役への接待が26回と、その前の3年間の3倍近いハイペースだと『文春』が報じたことです。菅義偉首相が官房長官当時、携帯電話料金の大幅引き下げを言い出したのが18年です。競争激化で利益率が業界3位に転落したドコモを、NTTが完全子会社にしてテコ入れする動きを強めた時期にも重なります。
NTT接待で更迭された総務省の谷脇康彦前総務審議官は、接待の席で携帯料金値下げが話に出たことを認めています。首相の看板政策と結びついた疑惑をあいまいにできません。
NTTは政府が株式を保有し、取締役の選任などで総務相の認定を受けます。政府と密接な関係にあるNTTの政治家接待の常態化の大本にメスを入れなければなりません。
何のためだったかを語れ
総務省は、首相の長男・菅正剛氏が勤務する放送関連会社「東北新社」の衛星放送事業の認定を一部取り消す手続きに入りました。申請時に法律違反があったという理由です。総務省はなぜ違反を見抜けなかったのか。同社から繰り返された接待や菅首相への忖度(そんたく)はなかったのか。謎だらけです。認定取り消しでは済まされません。
週明けの国会にはNTTの澤田純社長、東北新社の中島信也社長が招致されます。接待の全体像や狙い、行政に与えた影響などについて余すことなく語る責任があります。菅首相は解明を総務省任せにする姿勢を改める時です。