2021年3月9日(火)
2021国際女性デー
米 BLM運動家からメッセージ
BLM政治活動委員会上級顧問 アンジェラ・エンジェルさん
女性こそ社会の強さの源泉
米国では、人種差別の撤廃を訴える「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大事だ)」運動が大きく盛り上がり、社会に変化をもたらしています。国際女性デーにあたり、同運動に取り組むアンジェラ・エンジェルさん(BLM政治活動委員会上級顧問)に、米国における黒人女性の現状や日本の女性へのメッセージを聞きました。エンジェルさんはメリーランド州議会の元下院議員です。(ワシントン=池田晋)
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私たち黒人はこの国で、3種類の病の大流行(パンデミック)に直面しています。構造的人種差別と、それに基づく警察・司法制度、この二つは長年にわたるもの。その上に重なる、新型コロナウイルス危機です。
不平等が拡大
コロナで、あらゆる不平等が拡大しています。黒人女性はサービス業や、看護師をはじめ医療従事者のかなりの割合を占めています。白人と非白人の間には、賃金格差だけでなく、世帯貯蓄の差もあり、多くの黒人女性には在宅勤務などの選択肢すらありません。
前政権は、社会保障もなく最前線で働かされるこうした国民を救うことさえ拒んできました。
新政権が提示しているコロナ対策法案は、長い道のりの最初の一歩です。ただ、一つの政策で構造的な問題がすべて解決するわけでなく、私たちは依然、傷を癒やすどころか、出血を止める段階です。対策法案から外された連邦政府の最低賃金時給15ドル(約1600円)への引き上げなど、構造的な変革を引き続き政権と議会に求めていきます。
助けを求めて
日本でコロナ禍で女性たちが行き場をなくし、自ら命を絶っているというニュースには、ただ胸が締め付けられるような思いです。
女性の権利擁護は公私問わず私の人生の中心でしたが、山も谷もありました。弁護士になり、家庭も築きました。虐待するようになった夫が9年前に金を持って家を去り、5人目となる7カ月の子をおなかに抱えたまま、私はホームレスになり、全てを失いました。
日本の女性に知ってほしいのは、どんなに苦しくても、その瞬間がずっと続くわけではないこと。苦しい時は誰かに助けを求めてほしい。苦しみの中には教訓があり、それを解決に向かって生かせるなら、あなたを止められる人は誰もいないということ。手助けできるなら、日本の女性たちとつながりたい。
ゼロからの出発で苦しみを知ったことで、私はその2年後、メリーランド州議会議員になり、女性を助ける法律も通せました。
どんな社会であれ、女性が大事にされ、安心できる社会は繁栄し、女性が転落する社会は全体が転落します。私たち「ブラック・ライブズ・マター」の運動の先頭に立つのも女性たち。女性こそ強さの源泉だと強く信じています。