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2021年3月4日(木)

主張

東京外環道陥没

大深度工事を根本から見直せ

 東京都調布市の住宅街で昨年10月に起きた陥没について、東日本高速道路(NEXCO東日本)の有識者委員会が東京外かく環状道路(外環道)の大深度地下工事の施工不備を認めた最終報告を発表したことで工事再開の懸念が高まっています。特殊な条件下での事故だったとしますが、特殊性で片づけられることではありません。地上に影響はないとして大深度地下使用を推進してきた政府の責任は重大です。JR東海のリニア中央新幹線建設でも同様の工事が行われます。大深度地下工事そのものを根本から見直すべきです。

政府の説明は崩れている

 最終報告(2月12日発表)は「特殊な地盤条件」と「特別な作業」が重なったことを原因に挙げました。陥没箇所地下のトンネル掘削断面は礫(れき)が多く、上部は流動化しやすい層が地表近くまで連続している地盤でした。掘削機が詰まってカッターが回転しなくなったため、土を柔らかくする液体を注入したところ掘削機が土を取り込みすぎ、地盤が緩んで地上部が陥没したといいます。

 今回の現場以外に同じような地盤はないのか、他の場所でも陥没する可能性はないのか報告書は明らかにしていません。調布市だけの問題ではありません。一定の条件のもとでは他でも陥没が発生する危険性は否定できません。政府はこれまでの国会答弁で大深度地下工事について「地上への影響は生じないと考えている」と安全性だけを強調してきました。その説明はもはや崩れています。

 この工事は、東京都内の約16キロの区間で、40メートルより深い大深度地下にトンネルを掘って道路を通すというものです。「大深度地下使用特別措置法」にもとづく工事です。地上地権者の同意は不要で、地上の用地買収も必要とされません。沿線住民の意思を反映させる場もありません。

 地盤や地下水の状況、工事に伴う環境変化など未解明な問題が多いと指摘した専門家の意見や日本共産党の反対を押し切って同法は2000年の通常国会で可決、成立し、翌年施行されました。

 外環道は大深度地下を使った初めての道路事業です。安全性への懸念や財産権の侵害を理由に沿線住民が反対運動を続けています。現場周辺では以前から住民が振動、騒音などの被害を訴えていました。にもかかわらず工事を続行して陥没を起こしました。

 調査にあたった有識者委員会はNEXCO東日本が立ち上げ、メンバーの多くは大深度地下工法を推進してきた専門家です。事故を起こした当事者による調査では公正さが保てません。第三者委員会を設置した調査が欠かせません。政府も事業者任せにせず、原因究明に責任を持つべきです。

リニア建設も事故の危惧

 リニア中央新幹線建設では首都圏で約33キロ、名古屋市など中部圏で17キロにわたる、さらに大規模な大深度地下工事が行われます。地上には多くの人が生活しています。陥没は大事故になりかねず、絶対にあってはならないことです。

 リニア建設に反対する沿線住民の団体は同様の事故がリニアの大深度工事でも発生する危険を指摘しています。政府は“安全神話”にすがる姿勢を改め、リニア建設を含め大深度地下使用の是非を再検討しなければなりません。


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