2021年3月1日(月)
「思いやり予算」特別協定延長
二重三重に道理なし 廃止する以外にない
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日米両政府は、3月末に期限となる在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を定めた特別協定を1年延長する改定議定書に署名しました。日本政府は近く国会に提出して期限内の承認を狙います。2021年度は現行の負担水準が維持されますが、22年度以降の負担額については改めて協議します。同盟の再強化を掲げるバイデン米政権の下、駐留経費負担の増額要求が想定されますが、そもそも、特別協定の是非から交渉を出発させる必要があります。
拡大解釈したが
日本の米軍駐留経費負担の根拠となるのが、日米地位協定24条です。同条は「日本に米軍を維持するためのすべての経費は、日本に負担をかけないで米国が負担する」と規定。日本の負担は基地の地代や補償などに限られていました。
しかし、米側の「円高・ドル安」を口実にした要求により、1978年度から、(1)基地従業員の福利費など(2)米兵用の住宅や学校・娯楽施設、格納庫や倉庫などの提供施設整備費(FIP)の支払いを開始。政府は、これらの負担を「地位協定の範囲内」と拡大解釈しました。
米側の負担要求はさらに強まり、解釈では乗り切れなくなります。そこで87年度に「特別協定」を締結。これによって、労務費の基本給や水光熱費などを次々と負担するようになりました。政府は当時、「特例、暫定的な一時的措置」だと説明していましたが、今回も含めこれまで9回延長されています。
負担の比率増加
米軍駐留経費負担に関する特別協定を締結しているのは、米国の同盟国でも日本と韓国しかありません。韓国の特別協定も事実上、日米の特別協定がモデルになっています。
特別協定の費目は(1)労務費(基本給など)(2)水光熱費(3)訓練移転費です。防衛省資料によると、思いやり予算における特別協定による負担の比率は大きく増えています。
2021年度予算案の思いやり予算額は2017億円で、うち特別協定による負担額は、1538億円((1)労務費1294億円(2)水光熱費234億円(3)訓練移転費10億円)と76%を占めています。
さらに、特別協定のうち「訓練移転費」は、沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)経費、在日米軍再編経費にも準用されています。沖縄県道104号線越え実弾砲撃演習の訓練移転費や、米軍機訓練移転費を日本が負担し、日本全土に米軍の訓練を拡大しています。21年度予算案では、SACO経費の訓練移転費として13億円、米軍再編経費の訓練移転費として91億円が計上されています。
日米両政府は今後、新たな負担金額をめぐって交渉を行いますが、そもそも特別協定は、日米地位協定に照らしても二重三重に道理がないものであり、廃止するのが筋です。
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