2021年2月24日(水)
154自治体 医療独自支援
保団連調査 歯科を含め全機関
「国の責任で減収補填を」
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新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの医療機関が感染拡大防止対策のために経費がかさんでいるうえ、大幅な減収に見舞われ、苦悩しています。地域医療を守ることが課題となるなか、独自にすべての医療機関や医療従事者に対して給付・補助している市町村が少なくとも154にのぼることが分かりました(19日現在)。開業医10万7千人でつくる全国保険医団体連合会(保団連・住江憲勇会長)の調査で明らかになりました。
コロナ対応病院だけでなく多くの医療機関が新型コロナ感染症の影響を受け、大幅な減収に見舞われています。菅自公政権は、感染リスクの危険にさらされながら奮闘する医療機関に対する減収分の補填(ほてん)も医療従事者への手当も拒否しています。
こうした状況のもと、「地域医療の崩壊をさせないために独自に補助金や給付金を出す自治体が出てきました」。そう指摘するのは、同調査を手掛けた保団連の名嘉圭太事務局次長です。
補助のあり方は、「受診者の減少で経営に打撃を受ける医療機関に30万円」(宮城県山元町)など医療機関に一律か、または規模に応じた額を給付します。
また、国の第2次補正予算に計上され、都道府県が実施主体となっている「感染拡大防止等支援補助金」「医療従事者慰労金」への上乗せ支給を行う自治体もあります。
▽新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための取り組みを行う町内医療機関に対して、感染拡大防止対策や診療体制確保などに必要な費用を補助(広島県海田町)▽継続して提供することが必要な業務であることおよび医療機関での集団感染の発生状況を踏まえ相当程度心身に負担がかかる中、強い使命感を持って、業務に従事されていることに対し、応援金の給付(東京都東久留米市)―などです。
鳥取県岩美町は昨年、町内の2医院と歯科医院3院の実態調査を実施。受診控えなどによって1~3割の減収があることが明らかになりました。同町は地域医療の継続を支援しようと、1院当たり100万円の給付を決めました。
名嘉さんは「町自身が実態調査を行い、支援しました。町の医療機関を守る姿勢がはっきり出ています。今回の調査の中で、診療所に対して最も手厚い支援です」と強調します。
補助の財源として多くの自治体は、国の地方創生臨時交付金を活用しています。
減収に苦しむ医療機関にとって、自治体からの財政支援は貴重です。しかし、ほとんどの自治体が独自事業を2020年度予算で終了する予定です。
名嘉さんは「一般医療機関の減収が回復しない状況で、新型コロナ感染の第3波が襲いました。収束はいまだ見通せていません。自治体任せにせず、医療機関への減収補填と職員らへのさらなる手当の給付を国の責任で実施すべきです」と訴えています。
病床数に応じて給付金
慰労金「感謝の気持ち」
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、154自治体がそれぞれ独自事業で、医療機関に財政支援しています。保団連の調査から一部を紹介します。
千葉県市原市は、市内医療機関等に対し種別や病床数等に応じて1施設10万~600万円を給付。病院、診療所、歯科診療所、助産所、薬局など410施設が対象です。
茨城県城里(しろさと)町は、「感染リスクが高い最前線で献身的に業務に当たる町内の医療施設等の従事者に感謝」し、医療従事者1人に1万円と病院、診療所にはそれぞれ100万円、50万円を支給するとしています。
群馬県沼田市は、市内の医療機関に勤務する人と、市に住民票がある市外の医療機関勤務の人に「心からの感謝の気持ちを表し」、独自に慰労金1人3万円を給付。沖縄県宮古島市は、市内に住所があり、7月以降に島内の医療機関で5日以上勤務した職員を対象に、1人に5万円の慰労金を支給します。
受診者が減り、経営に打撃を受ける医療機関も少なくありません。宮城県山元町は、2歯科診療所を含む医療機関8施設に、1機関あたり30万円を給付します。
茨城県日立市は、緊急事態宣言期間中も社会生活に必要として営業を継続した歯科などの事業者に対し、一律10万円の特別営業支援金を支給することにしています。