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2021年2月21日(日)

日米演習 1245日

南シナ海で一体化進行

19年度 海自が大幅増

 自衛隊と米軍が2019年度に実施した共同訓練・演習(日米双方が参加した多国間共同訓練を含む)が少なくとも76回、延べ1245日に達したことが分かりました。14年度に1000日を突破して以降、6年連続で1000日を超え、高止まりで推移しています。


グラフ:日米共同演習の延べ日数

 本紙が、防衛省への情報公開請求で入手した資料をもとに集計しました。延べ日数の内訳は、統合幕僚監部(統幕)が担当する統合演習が92日、陸上自衛隊が395日、海上自衛隊が595日、航空自衛隊が163日でした。

 ただ、空自が開示した共同訓練実績は多くが黒塗りで、実施日数が不明の共同訓練が多数存在。東シナ海周辺空域での訓練などを非公開にしているとみられます。これらを加えれば延べ日数はさらに増えます。

 18年度比でみると、統幕が73日減、陸自・空自が同水準だった一方、海自が88日の増加でした。南シナ海での訓練日数が増えており、中国に対抗する米軍との一体化が進んでいます。

 海自は、インド太平洋地域で2カ月以上におよぶ長期巡航訓練を行い、米国はじめフランス、オーストラリアなどと共同訓練を行いました。

 特に“日本版海兵隊”といわれる陸自の「水陸機動団」が初めて海自のヘリ搭載型護衛艦「いずも」に乗艦して長期航行。南シナ海で米原子力空母ロナルド・レーガンなどとともに日米共同訓練を実施しました。強襲揚陸艦に搭乗し、海外遠征を行う米海兵隊のように、水陸機動団が海外侵攻能力を高めています。

 空自は、核兵器を搭載可能な米空軍B52戦略爆撃機との共同訓練を少なくとも3回行っています。一方、訓練内容や実施場所、参加部隊の黒塗りが目立ちます。

米中対立下 訓練激化

日米共同部隊化につながる動き

 2019年は、18年から続く貿易に関する米国と中国の制裁・報復関税の応酬などで米中対立が激化。南シナ海での軍事拠点化を進める中国は19年7月、対艦弾道ミサイルの発射試験を初めて南シナ海で行ったとされています。米中による軍事的衝突の危険も指摘されるなど、緊張が高まった年でした。

行動強く警戒

 米国防総省は同年6月、「インド太平洋戦略報告」を公表。この中で、中国を「修正主義勢力」と位置づけ、インド太平洋地域で「覇権を追求している」とし、南シナ海での行動を強く警戒。日米の作戦協力、艦船などの相互防護、有事の共同計画の進展を強調し、日米が中国の海洋進出を念頭に打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」を具体化し、中国への対抗姿勢を示しました。

 こうした中、海上自衛隊は19年4月30日~7月10日まで、インド太平洋方面に護衛艦「いずも」などによる「インド太平洋方面派遣訓練部隊」を派遣し、長期巡航訓練を実施しました。「いずも」には“日本版海兵隊”水陸機動団が乗艦。陸上自衛隊部隊がインド太平洋で長期航海するのは初めてでした。

 在沖縄米海兵隊の第31海兵遠征隊(31MEU)は、F35Bステルス戦闘機やMV22オスプレイなどを搭載した強襲揚陸艦に乗艦し、インド太平洋地域に展開しています。「いずも」もF35Bを搭載するための改修が計画されており、海兵隊と同様の運用が狙われているとみられます。

B52核爆撃機

 派遣訓練部隊は、6月には2度にわたり、南シナ海で日米共同訓練を実施。「いずも」と米原子力空母ロナルド・レーガンが指示された位置へ的確に艦を移動させる訓練「戦術運動」をしたり、「いずも」の甲板にレーガン搭載のヘリが着艦したりしました。

 水陸機動団は、オーストラリアで行われた陸・海自と米海兵隊・海軍との日米共同実動訓練「タリスマン・セーバー19」(6月~8月)にも参加しました。自衛隊準広報紙「朝雲」(19年8月8日付)によると、沖合の輸送艦「くにさき」から水陸両用車AAV7が発進し一斉に上陸、米軍AAV7と日米共同で内陸部に前進。CH47ヘリを使った空中機動訓練では水陸機動団の隊員たちが敵陣後方へのヘリボーン降下も行ったほか、地形の異なるビーチで着上陸し、目標に向けて前進し総攻撃を行う陸上戦闘を行ったとしています。

 陸自は、派遣訓練部隊への水陸機動団の参加について、「今後も自由で開かれたインド太平洋構想に寄与していく」としており、今後も訓練を行う考えを示しています。こうした訓練の常態化は、「専守防衛」を逸脱した、南シナ海での日米共同部隊化につながるものです。

 また、米戦略核戦力の「3本柱」の一つであるB52戦略爆撃機と航空自衛隊の共同演習が常態化していることは、自衛隊が米軍の核戦略に組み込まれていることを示しています。北東アジアでの核軍拡を促す重大な動きです。

図

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