2021年2月14日(日)
コロナ禍 雇用危機「いつまで…」
職探し嘆息
都内ハローワーク前で聞く
雇用の危機が続いています。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言が10都府県で出ている12日、東京都内のハローワーク(公共職業安定所)前で聞きました。(芦川章子、田中真聖、津久井佑希、仁田桃)
|
若者が行きかうハローワーク渋谷前。
輸入ワインの物流倉庫で昨年秋まで9カ月間働いていた30代の男性は「残業代が多め」と聞いていましたが、新型コロナの影響で思うような収入がありませんでした。1回目の緊急事態宣言前は飲食店向けに1日80ケースあった出荷が、宣言後は1ケースに激減しました。
貯金を取り崩しながら食費を月6000円から8000円に収める生活が何カ月も続いています。男性は未経験でも応募できる福祉関係の求人を探しています。「この状況がいつまで続くのか分からず困っている。早く収束してほしい」とため息をつきました。
都内在住の30代のエステティシャンの女性は、昨春の緊急事態宣言後から会社から休むよう要請されるようになり、収入が不安定に。会社の事業縮小で先月、失業しました。
今は夫の収入でやりくりしていますが、貯金する余裕はなく「子どもがいるので将来が不安です」と声を落とします。女性は美容関係の仕事を希望していますが現実は厳しそうだと言います。「まったく知らない業界の仕事をする覚悟もしている」と話しました。
仕事見つからない
貯金取り崩し ■ 給付金出して
|
休業手当の申請に来ていたタクシー運転手の男性(55)は、月50万円あった給料が緊急事態宣言後は20万円ほどに減りました。
新型コロナの感染者を乗せるリスクを負っているにもかかわらず、手当がないと話し「せめて危険手当がほしい」と政府の無策に憤りをぶつけます。
下町、台東区上野。ハローワーク上野にも次々と人が訪れ、求人票を見つめています。
調理師の男性(26)は昨秋、3年勤めた和食店から「店がもたない」と「強制的に」辞めさせられたといいます。以前の店では料理長の経験もあります。
昨年末にもらった採用内定も2度目の緊急事態宣言で立ち消えに。「失業給付が満額出るのは3月いっぱい。料理以外の仕事も考えていますが採用される人は経験者ばかり。飲食店は壊滅的。このまま仕事が見つからなかったら…」と不安を口にします。同じ時に解雇された同僚は自ら命を絶ちました。「実家にも帰れない人だったから…」。国に対して「仕事が見つかるまででいい、給付金を出してほしい」と切々と訴えます。
ハローワークに来た理由を「役所から就労活動が義務付けられているから」と話す女性は「仕事は見つからない。体調も悪いので」と声を落とします。
|
事務職の派遣社員だったという30代の女性は「昨年初めから仕事を探しているけれど見つからない。派遣会社にも登録していますが、コロナ以降、仕事はぐっと減りました」。上京して10年。1人暮らしの支えは「実家から送られてくるお米。あとは貯金を取り崩して生活しています。次の仕事を早く見つけたい」と力なくほほ笑みます。
厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症拡大に起因する解雇・雇い止めは、昨年5月以降の累計で8万6551人(2月5日現在、見込み含む)に上ります。うち非正規労働者数は4万1396人です。
総務省「労働力調査」によると、2020年1年間で非正規雇用は75万人減少。うち50万人が女性です。
有効求人倍率(20年平均)は前年比0・42ポイント低下の1・18倍。低下幅は第1次石油危機後の1975年以来45年ぶりの大きさです。求人数は2割落ち込んでいます。
解雇・雇い止め まず防げ
|
全労連の黒澤幸一事務局長の話 深刻な雇用危機が続くなか、年度末が近づき、さらに不安が広がっています。まずはコロナを口実にした解雇・雇い止めを防ぐことです。雇用主が努力を図るのはもちろん、国の支援施策の拡充は欠かせません。
失業者への支援として職業訓練などの求職者支援制度の改善も必要です。
「非正規労働者」や「雇用によらない働き方」など不安低な労働者を増やす国の施策を変える必要があります。緊急に、労働者の雇用を守り切る政治の決意と行動が必要です。