2021年2月10日(水)
主張
官房機密費の闇
つかみ金に多額の税金やめよ
使途をチェックできない内閣官房機密費(報償費)に多額の税金が投じられていることが議論を呼んでいます。なかでも官房長官が自由に使え、領収書もいらない「政策推進費」のあり方に批判が集まっています。同費は安倍晋三政権時代の7年8カ月で86億円超が支出されました。菅義偉政権の4カ月半では約3・6億円の支出となっています。これほどの額の税金が官房長官の“つかみ金”とされ、行方不明のままということに国民は納得できません。官房機密費の闇にメスを入れる時です。
領収書不要で自由勝手
内閣官房機密費は、使い道が一切公表されず、会計検査院でさえも支出先を調査できない公金です。政府は、「内政・外交を円滑かつ効果的に遂行するため」の経費で、使途を明らかにすることは「国の機密保持上、適当でない」と説明します。しかし、「機密」の名のもとに、自民党の選挙資金、国会対策、マスメディア対策など政権が党利党略的に使ったり、私的流用したりした疑惑がたびたび浮上しました。その実態を官房長官経験者が証言したこともあります。
官房機密費には「政策推進費」「調査情報対策費」「活動関係費」の3種類があります。とくに問題になっているのが、「政策推進費」です。「事務補助者」が出納管理する他の二つの支出と異なり、「政策推進費」は官房長官に資金が渡った時点で支出完了になります。領収書も不要です。官房長官の裁量で、自由勝手に使用できるため、官房機密費の中でも闇の金の要素が最も強いとされます。
安倍晋三前政権時代、菅官房長官の下で「政策推進費」はどうなっていたのか。本紙が情報公開で入手した資料によれば、2012年から20年9月までに支出された官房機密費の総額は95億4200万円余にのぼり、うち86億8000万円余が「政策推進費」でした。在任期間7年8カ月(2822日)で見ると1日307万円使った計算です(1月4日付)。
見過ごせないのは、安倍首相辞任表明を受け、菅氏が自民党総裁選に出馬表明した昨年9月の金の動きです。同1日、菅氏は官房機密費1億3200万円から9020万円を「政策推進費」に振り分けました。菅氏は16日に首相に就任しましたが、加藤勝信官房長官に引き継いだ「政策推進費」は4200万円です。16日間で4820万円は何にあてられたのか。日本共産党の小池晃書記局長は1月28日の参院予算委員会で、「総裁選のために使ったといわれても仕方がない」と追及しました。菅首相は「一切ない」と答弁しましたが、証拠は示しません。「政策推進費」は、官邸全体の闇の金としての性格もあります。安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭費用を補填(ほてん)した原資が問題になる中、官邸の公金の使い方はあいまいにできません。
異常な支出を続けるな
加藤官房長官は、菅政権発足以降の官房機密費は5億円で、うち「政策推進費」は約3・6億円になると発表しました。官房長官の“つかみ金”が闇のベールに包まれたまま続いていることは問題です。官房機密費を追及する市民団体は、目的外使用の禁止と使途公開ルールをつくることを要求しています。異常な税金の使われ方を国民は許しません。