2021年2月8日(月)
主張
南西諸島「防衛」
軍事緊張高める企てを許すな
鹿児島県の大隅諸島から沖縄県の先島諸島へと連なる南西諸島で、中国の軍事的脅威に対抗するため、自衛隊と米軍の基地増強・一体化の動きが急速に進んでいます。一方で、馬毛島への米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)の移転が大争点になった鹿児島県西之表市長選(1月31日)で反対の立場を表明した八板俊輔市長が再選を果たすなど、「軍事基地ノー」の声も高まっています。南西諸島を前線基地化する企てを許さないたたかいを大きく広げることが必要です。
米中衝突の最前線に
政府は、中国が軍事戦略上「第一列島線」と呼ぶ南西諸島の防衛態勢を強化するとして自衛隊部隊・基地の増強を図ってきました。
▽2016年3月、日本最西端の与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視隊を配備▽18年3月、海から敵地に上陸する水陸両用作戦を実施する陸自の水陸機動団を新設▽19年3月、艦船を攻撃する陸自の地対艦ミサイル部隊、航空機を迎撃する地対空ミサイル部隊などを奄美大島に配備▽昨年(20年)3月、宮古島に地対艦・地対空ミサイル両部隊を配備―などです。
この他、石垣島への陸自の地対艦・地対空ミサイル両部隊の配備や、馬毛島を自衛隊の訓練基地、有事の際の兵站(へいたん)拠点にすることも狙われています。
政府は昨年末、南西諸島防衛のためとして、中国本土にも到達できるような長距離ミサイル(12式地対艦誘導弾能力向上型)の開発を決めました。地対艦ミサイル部隊が置かれる奄美大島や宮古島などに配備される恐れがあります。
米海兵隊は現在、対中戦略として、長射程の対艦・対空ミサイルを装備した部隊を南西諸島やフィリピンなどの島々に展開させ、中国軍の艦船や航空機を攻撃する「遠征前進基地作戦」(EABO)を打ち出しています。そのための訓練も沖縄の米軍基地などで繰り返しています。台湾や南シナ海での有事を想定しているとされ、南西諸島が米中の軍事衝突の最前線、戦場になる危険があります。
こうした下で、自衛隊と米軍との一体化も進行しています。
昨年10~11月の日米共同統合実動演習では、トカラ列島にある無人島・臥蛇島(がじゃじま)で水陸機動団と米海兵隊が水陸両用作戦を訓練しました。この時、自衛隊は、鹿児島県の種子島、奄美大島、徳之島、沖永良部島と沖縄県の本島、久米島、宮古島、与那国島などで一斉に訓練を実施しました。
今年1月には、陸自と米海兵隊が、海兵隊の新基地建設が強行されている沖縄本島のキャンプ・シュワブ(名護市)に水陸機動団の常駐を検討していたことも明らかになり、基地負担の強化・恒久化として大問題になっています。
反対の声いっそう強め
宮古島や石垣島では、ミサイル部隊配備などに反対する運動が続いています。1月17日の宮古島市長選では「市民の理解を得ない安全保障はない」と主張する座喜味一幸氏が勝利しました。
東シナ海や南シナ海での中国の覇権主義的行動が許されないのは当然です。同時に、これに軍事力や軍事態勢の強化で対抗すれば南西諸島をめぐる緊張が一層高まるのも明らかです。「島を戦場にするな」の市民の声を強めるとともに、中国の覇権主義を許さない国際世論を高めていくことが重要です。