2021年2月7日(日)
政治考
菅政権 統治能力喪失
コロナ失政 夜の銀座通い 森暴言…
「銀座トリオ」―自民党の松本純前国対委員長代理、田野瀬太道前文部科学副大臣、大塚高司前国会対策副委員長の3人が、緊急事態宣言で政府・与党が飲食店の時短要請、国民の会食禁止を要請しているさなか、銀座の高級クラブで深夜まで飲食していた問題に国民の怒りが沸騰しています。公明党の遠山清彦前幹事長代理も加えると与党の「銀座カルテット」です。同氏も同じく銀座のクラブで午後11時すぎまで遊んでいました。国民に罰則を科す特措法・感染症法改定の審議の中で、「国民には罰則、与党幹部はルール無視でもおとがめなしか」と厳しい批判が押し寄せました。
「国民から遊離」
「安倍政権以降の自公政権は、ルールは自分たちを縛るものではなく、国民を縛るためのものだと考えています。立憲主義を破壊した安保法制強行から、今回の夜の飲食まで、自らを縛るという考えがない。自分たちは別という特権意識ともつながっています」
こう批判するのは市民連合呼びかけ人の山口二郎法政大学教授(政治学)です。「菅政権は、コロナ禍での国民の状況をわかっていないし、わかろうとしない。政治が国民から遊離している」
フラワーデモ埼玉・呼びかけ人の野田静枝さんは「フラワーデモなどをやっていて痛烈に感じるのは、コロナ禍で弱者がいっそう追い込まれていること。その状況で(銀座通いとは)、政治家としての資質以前に、人間として問題があるというところにきています」と憤り、作家の中沢けいさんは「菅政権は、コロナ感染の実態を把握できていないのでないか。だから危機意識が非常に弱い。感染防止と経済の両立を言うけれど、まず感染防止をしてから経済対策に進むのが当然」と批判します。
幹部の銀座通いに続き、大規模買収事件で有罪判決を受けた河井案里参院議員の議員辞職、菅首相の息子の違法接待疑惑、さらには東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を務める森喜朗元首相の女性差別発言など、政権与党にからむ重大問題が次々と噴出する状態です。
体質のあらわれ
落語家の立川談四楼さんは森発言について「何を言っても許されるという自民党体質のあらわれですね。公の場で平気で女性を踏みにじるようなことを言える。『いけねぇやっちまった』というくらいですよ」とおごりを批判します。
案里議員の辞職で参院広島選挙区、衆院北海道2区と参院長野選挙区の3選挙区でたたかわれることになった4月の統一補選は、「激動のなかで大きなターニングポイントになる」(自民党議員)という見方が強まります。
山口氏は「菅政権のコロナ対策での失政。さらに次々とおこる問題。菅政権は統治能力喪失といえる事態です」と述べ、「自公政権倒し政権交代を実現するしかありません」と強調します。
生活実感と大きな差
菅首相や自民党幹部自身がコロナ感染拡大の中で会食を続けてきました。政府の対策分科会が「感染リスクが高まる5人以上の会食」を避けるよう呼びかけるなかで、首相は昨年12月14日、経済人など約15人と会食。さらに同日深夜、銀座のステーキ店で二階俊博幹事長とともに著名人らと会食をしましたが、二階氏は「まったく無駄なことをしているわけではない」と開き直りました。(12月27日のBS番組)
ウソ答弁と同根
談四楼さんは「自分たちは許されるというおごりと同時に、二階さんや菅さんが率先して会食しました。自民党内ではやっていいということでしょう」と批判。銀座トリオのウソについて「安倍前首相の記録的な国会でのウソがあるし、菅首相も学術会議問題では説明を拒否してきた」と問題の根源を指摘します。
1月26日、最初に松本、遠山両氏の夜の銀座訪問が報じられると松本氏は謝罪。しかし「1人で行った」と説明していました。ところが同30、31日にかけて田野瀬、大塚両氏が同席していたことが明らかになりました。
松本氏は1日、「前途ある有望な彼らをなんとしてもかばいたい」などと釈明。林幹雄幹事長代理も「後輩をかばったことがウソにつながった」(1日、国会内)とかばいだてました。
公明党の遠山氏は当初、役職辞任さえ否定しましたが、キャバクラ代を政治資金で支出した問題も明らかになり、支持母体の創価学会からも激しい批判の声が沸き起こるなか、議員辞職に追い込まれました。
談四楼さんは「庶民がはいずり回り、飲食店が時短で苦しんでいる。罰金を取る法律改定を自らやってしかも国民にウソつく。さらに、後輩を心配する『美談』にするなんて許されない」と怒りをあらわにします。
ほとぼり冷まし
自民党はトリオ3人に対し離党を勧告。3人は離党しましたが議員辞職は拒否しています。談四楼さんは「つまりほとぼり冷まそうってこと。役職を辞しただけで議員はやめない。自民党らしい」と指摘します。日本共産党の小池晃書記局長は「3氏ともウソをついていたことは極めて重大だ」と述べ、議員辞職を強く求めました。(1日の記者会見)
コロナ対策への無為無策に加えて、与党議員の銀座での会食への批判は選挙結果としても表れ、北九州市議選で自民党は現有22議席から16議席へと大きく減らしました。公明党は現有議席を維持しましたが、全選挙区で得票を減らしました。
自民党議員の1人も「危機感がなさすぎだが、危機感がないのは、国民生活の現場の実感とかけ離れているから。厳しい現実が見えていない」と指摘。「ウソをついたこともふくめ政治家失格といわれても仕方ない、議員辞職させないと自民党も危ない。4月の補選にも大きく影響する」と語ります。
政権寄りの発言で知られるジャーナリストの田崎史郎氏も「一体この緊急事態宣言下で何をやっているんだという(国民の)怒りはその通りだと思う」(2日のテレビ番組)と苦言を呈しました。(伊藤幸・若林明)
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