2021年2月5日(金)
主張
河井案里議員辞職
1.5億円の説明責任は免れない
2019年7月の参院選広島選挙区での大規模買収事件で有罪判決を受けた河井案里参院議員が議員を辞職しました。昨年6月の逮捕後も議員に居座り続けてきましたが、ついに辞めざるを得なくなりました。しかし辞職に際して、有罪判決に「納得しかねる」などと記した1枚の書面を発表しただけで、反省がありません。案里前議員の選挙には自民党本部から1億5000万円にのぼる資金が投じられており、買収の原資となった疑いが深まっています。議員を辞めたからといって幕引きはできません。
票をカネで買う重大犯罪
河井陣営の大規模買収事件は、夫の河井克行元法相・衆院議員が主導し、選挙区の地方議員など100人に計約2900万円の現金を提供し、票の取りまとめを依頼したものです。河井夫妻は逮捕直前に、自民党を離党しましたが、議員辞職には応じませんでした。
東京地裁は1月、案里前議員について広島県議4人への買収を認定し、懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。克行元法相の買収事件は公判が続いていますが、案里前議員への判決の中では克行元法相との買収の共謀の事実もはっきりと認定されました。
票をカネで買う買収行為は民主主義を破壊する重大犯罪です。河井夫妻が説明責任を果たさず、辞職しないことに世論の批判が高まりました。
案里前議員は2020年10月に保釈されても、国会に姿を現しませんでした。逮捕後総額2000万円を超す議員歳費などを受け取り続けたことに、コロナ禍で国民が苦しんでいるときにおかしい、と怒りの声が相次ぎました。案里前議員の議員辞職は遅きに失したもので、辞めても説明責任は消せません。国会に招致して真相をすべて語らせるべきです。
何より解明が必要なのは当時の安倍晋三政権と自民党執行部の関与です。案里前議員の参院選出馬は、安倍前首相や官房長官だった菅義偉首相の強い後押しを受けたものです。自民党本部は河井陣営に他の候補者と比べて破格の1億5000万円もの資金を援助しました。そのうち1億2000万円は税金である政党助成金です。これらの巨額の資金が大規模買収の原資となった可能性は濃厚です。自民党執行部は使途を徹底的に解明する責任があります。
菅首相も案里前議員の選挙応援に行ったことをはじめ熱心にテコ入れしました。自民党本部と官邸が一体になって支持した実態を明らかにすべきです。菅首相が「政治家は自ら責任を自覚し、しっかり対応すべきだ」などとひとごとで済ませるのは許されません。
議員辞職のドミノ現象
昨年末以来、与党の議員辞職は、鶏卵汚職で在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相・前衆院議員、「夜の会食」を批判された公明党・遠山清彦前衆院議員、今回の案里前議員と相次いでいます。まさに辞職ドミノという異常事態です。与党のモラル崩壊極まれりです。
安倍前政権以来の「政治とカネ」疑惑は、安倍前首相自身の「桜を見る会」前夜祭問題をはじめ山積しています。菅首相の長男がかかわる総務省幹部の接待問題も浮上しています。一連の疑惑の徹底解明が不可欠です。