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2021年2月3日(水)

主張

ミャンマー政変

軍事独裁の復活は許されない

 ミャンマー国軍によるクーデターに断固抗議します。昨年11月の総選挙で示された民意を武力で覆し、民主主義を破壊する暴挙です。国軍は、アウン・サン・スー・チー国家顧問ら拘束した政権指導者を直ちに解放し、選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)政権を原状復帰させなければなりません。軍事独裁の復活とたたかうミャンマー国民への国際的連帯が求められます。

民主化と和平の努力覆す

 総選挙ではNLDが改選議席の8割超を得、国軍系野党が惨敗しました。国軍は不正があったとしていますが、選挙管理当局は受け入れず、国際監視団は、選挙は公正だったと評価しています。国軍の主張に根拠があるとはみなされていません。

 現行憲法は国会議席の4分の1を軍人枠に充てています。軍政時代の特権を残した憲法の改正をめざすNLDが圧倒的に支持されたことで国軍は追い詰められていました。クーデターを起こしたのは新しい国会開会の当日でした。新政権の発足を暴力で阻み、国軍の特権を維持しようとする企てであることは明白です。

 スー・チー氏は抗議行動に立ち上がるよう国民に呼びかけました。グテレス国連事務総長が同氏らの拘束を非難し、民意と民主主義を尊重するよう国軍に要求したほか欧米諸国がクーデターを強く批判しました。ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は議長国(ブルネイ)声明で、民主主義、法の支配、人権擁護などASEANの原則を守るよう呼びかけました。国軍はこの声を受け止め、ただちに事態を正常に戻すべきです。

 国軍は1962年にクーデターで政権を握り、約半世紀にわたって独裁支配を敷きました。民主化を求める世論に押されて90年に総選挙を実施しましたが、NLDが圧勝すると選挙結果を拒否し、軍が主導する形式上の「民政」に移管した2011年まで軍政を続けました。NLDは15年の総選挙で単独過半数を得て政権に就き、ようやく民主化が本格化しました。

 NLD政権はこの5年間、依然として強大な力を持つ国軍と、憲法改正、民主化について粘り強く対話を続けてきました。クーデターは営々と積み重ねられてきた努力を踏みにじるものです。

 ミャンマーでは70年以上にわたって内戦が続いています。少数民族の武装勢力と国軍、政府が参加する和平プロセスがNLD政権のもとで進展し、国民主権や民族平等を原則とする新しい連邦国家に向けた協議が行われてきました。多くの少数民族組織は国軍に不信を抱いており、クーデターは和平の努力も無にしかねません。

最大の援助国の役割を

 日本政府は過去、ミャンマー国軍が民主化運動を弾圧しているさなかに軍事政権を承認し、政府開発援助の供与などで軍政に支援の手を差し伸べました。この誤りを繰り返すことは許されません。

 茂木敏充外相は、民主化を損なう事態に「重大な懸念」を表明し、スー・チー氏らの解放を求める談話を発表しました。日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国中、ミャンマーに対する最大の援助国です。今日本に求められる役割は民主化と和平を求める同国民の願いに沿った行動です。


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