2021年2月2日(火)
生活保護 扶養照会がハードル
「家族に知られたくない」
民間団体がアンケート調査
貧困問題に取り組む稲葉剛さんが代表理事を務める一般社団法人「つくろい東京ファンド」は、利用しやすい生活保護制度に向けて、アンケート調査を実施しました。生活困窮者が生活保護の利用を避けがちな背景に、自治体から親族に扶養可能かどうかを問い合わせる「扶養照会」があることが改めて浮き彫りになりました。(仁田桃、和田育美)
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アンケートは昨年12月31日~1月3日に年越し緊急相談会などで実施。165人が回答しました。回答者の平均年齢は56歳、男性が150人と9割を占め、女性は13人で7・9%でした。
生活保護を利用していない128人に、その理由を聞くと「家族に知られるのが嫌」が最も多く、34・4%でした。
生活保護を利用したことのある59人のうち、扶養照会に「抵抗感があった」と回答した人は54・2%(32人)で半数を超えました。
アンケートには、その理由としてこんな声が寄せられています。
―家族から縁を切られるのではと思った
―知られたくない。田舎だから親戚にも知られてしまう
―不仲の親に連絡された。親は「援助する」と答え(申請は)却下。実家に戻ったら親は面倒など見てくれず、路上生活に
―親に心配をかけたくない
ほかにも、利用していない理由として、「ひどい施設に入れられ嫌になって保護を切った」「若いから働くように言われた」「区は相談にいっても保護を受け付けてくれない」などの声が出ています。
日本では、生活保護利用の資格がありながら利用していない世帯が8割にものぼると言われています。背景の一つに、親や配偶者だけでなく、ひ孫やおじ・おばなど3親等まで「扶養義務」の対象としていることがあります。
日本共産党の小池晃書記局長は1月28日の参院予算委員会で、扶養照会について「生活保護法に『扶養照会をしなければならない』と書いてあるのか」とただしました。田村憲久厚生労働相は「扶養照会は義務ではない」と明言。小池氏は、政府がコロナ禍での生活保護利用を「ためらわずに申請を」と呼びかけていることに触れ、「扶養照会はやめるべきだ」と強調しました。
つくろい東京ファンドは扶養照会をやめさせるネット署名に取り組んでいます。