2021年2月2日(火)
ミャンマー クーデター
民主化・和平 重大な危機
軍、全権掌握を正当化
ミャンマー国軍は1日、政権指導者を拘束して全権を掌握しました。このクーデターで、ミャンマーの民主化と国内和平のプロセスは重大な危機を迎えています。(ハノイ=井上歩)
ミャンマーからの報道によると、国軍系テレビ発表の声明で国軍は、自らが主張する「総選挙の不正」に選挙管理委員会や政権が対処しないと非難し、実力行使による権力掌握を正当化しました。
しかし、昨年の総選挙は事前の世論調査結果と合致。選挙監視にあたった国内外の団体・機関も大規模な不正は認めておらず、結果が変わる現実の可能性はありませんでした。
選管は「選挙は自由で公正だった」との立場を堅持。軍は調査要求をはねつけられて怒りを募らせたともいわれますが、この緊張の根底には民主化と憲法改正をめぐる政治状況があります。
民主化を目標とするNLDは、国軍に大きな国政上の権限を認めた憲法の改正を掲げ、総選挙で民意の大きな支持を得ました。憲法の特権を維持したい国軍側は、明らかに不利な状況に追い込まれていました。
ミャンマーの最大の課題は70年以上続く内戦の終結と国内和平であり、大目標で一致するNLD政権と軍、少数民族勢力はこの5年間、地道な対話を積み重ねていました。NLDが求めた民主化は、新連邦国家の合意で恒久平和を実現するためでもあり、スー・チー国家顧問は国民に繰り返し辛抱強さを求めてきました。しかし、クーデターで当事者間の信頼は失われ、対立状況に逆戻りするのは必至。和平プロセスは根本的な危機を迎えました。このため国軍の性急さと身勝手さが際立っています。
国軍は今回、憲法を停止せず、暫定的な軍事政権下で選挙をやり直すと表明し、クーデターの違法性や不当さをごまかそうとしています。しかし、特権を守るために国の将来を犠牲にする行動に出たことは国民の目には明らかで、激しい反発が避けられません。