2021年1月26日(火)
コロナ禍 貧富の差拡大
国際NGOが報告書
国際NGO「オックスファム」は25日、新型コロナウイルスによる経済危機のなか、富裕層はすでに損失を回復し、富を増やす一方、貧しい者はいっそう困窮する「極端な不平等」が深刻化していると述べる報告書を発表しました。
富裕層上位1000人は、コロナ禍の当初の株価下落で被った損失を、わずか「9カ月で完全回復」させました。実体経済は100年に1度の不況にあえいでいますが、政府による株式市場へのてこ入れで、2008年の金融危機時には5年かかった損失回復をより、早いスピードで実現させています。
世界全体では、10億ドル以上の資産を持つ富裕層は昨年3月~12月までに資産を3兆9000億ドル(約404兆5000億円)増やし、総資産が11兆9500億ドルに。これはG20各国がコロナ対策で投じた総額に匹敵します。
米ネット通販大手アマゾンのCEOベゾス氏や電気自動車テスラのCEOマスク氏、マイクロソフトの創業者ゲイツ氏ら上位10人は、この間、5400億ドル増やしています。報告書は、ベゾス氏は昨年9月時点で、もし全従業員の87万6000人に1人あたり10万5000ドルのボーナスを払ったとしても、パンデミック前と同レベルの資産を維持できたとしています。上位10人が増やした資産だけで、貧困に陥る人をなくし、世界の全ての人に新型コロナのワクチン接種が可能となると述べています。
報告書は、コロナ禍からの速やかな経済回復には、「より公平な経済がカギ」だと指摘。パンデミックのなかで利益を上げた32社の世界的企業に課税すれば20年に1040億ドルを得られたとし、低・中所得諸国の全ての労働者に失業手当や児童・高齢者扶養手当が十分支払える額だとしています。
コロナ禍からの経済回復において、富裕層に応分の税負担を求めるなど各国政府が格差是正に踏み出すよう決断を迫りました。