2021年1月15日(金)
コロナ感染拡大 切迫する救急医療
「搬送先決まらず」急増 調整に時間かかり 生命の危機
新型コロナウイルスの新規感染者が急増する東京都で、救急医療体制が切迫しています。感染拡大に伴って患者の搬送先がなかなか決まらないケースが増加。都民の命にかかわる危機的な事態となっています。(丹田智之)
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3日午後10時ごろ、世田谷区上用賀の生活道路と幹線道路が交わる交差点で小学4年の男児(9)が自動車にひかれて死亡する事故がありました。報道によると、男児は弟(2)を乗せたベビーカーを押して横断歩道を渡っていたところ、左折してきた自動車と接触。現場に救急車が駆けつけましたが、新型コロナの影響で近くの病院に受け入れを断られ、数十分かけて品川区内の病院に搬送されたといいます。
「救急車動かず」
事故があった交差点の近くに住む会社員の女性(29)は「サイレンの音が聞こえ、20分ほどたって外に出たら、救急車とパトカーが止まっているのが見えました。自動販売機で飲み物を買って家に戻るまで救急車は同じ場所に止まったままでした。かなり長く感じた」と振り返ります。
都救急災害医療課によると、救急搬送の際に5カ所以上の病院に断られたり、受け入れ先が20分以内に決まらなかったりしたケースが急増しています。新型コロナが急拡大していた昨年12月は、前年同月比758件増の1632件に上りました。昨年10月は1053件、同11月は1246件と増え続けています。
現場の負担増加
この背景について、同課の久村信昌課長は「新型コロナ感染者の対応で医療機関の負担が大きくなっていることが関係している」と指摘します。
都の発表(13日午後8時)によると、都内の新型コロナ感染者のうち入院中は3266人で、ホテルや自宅などで療養中は9395人です。入院・療養先を調整中(待機中)の感染者は6546人に上ります。
東京消防庁救急管理課の担当者は「感染拡大と連動して救急隊の現場滞在時間が長くなる傾向がある」と説明。都内の救急搬送の現状について「自宅などで待機中の新型コロナ感染者が高熱や呼吸困難などの症状を訴えて救急車を呼ぶケースが増え、入院先を決める保健所との調整に時間を要している。そのことで通常の救急患者の搬送に影響が出ていることも考えられる」と述べています。