2021年1月7日(木)
国際目標SDGs 日本政府指針は財界要求第一
格差是正なし
誰ひとり取り残さない―このスローガンのもと2030年までに「世界から貧困をなくす」「続かない世界を続く世界に変える」など17の目標と169の「ターゲット」の達成を目指す国連の「持続可能な開発目標」(SDGs=エス・ディー・ジーズ)。日本は2016年12月に同目標の実施指針を策定しました。しかし政府のアクションプランには、貧困と格差を解消する目標が、すっぽり抜け落ちています。
大門議員が追及
この問題を国会でとりあげたのが日本共産党の大門実紀史議員。大門氏は、昨年12月2日の参院地方創生・消費者問題特別委員会で、政府のSDGsアクションプランには貧困・格差の解消が位置づけられておらず、財界が要求する「Sоciety(ソサエティ)5・0」の達成が第1目標に据えられていると批判しました。さらに、監視社会をつくるスーパーシティ構想推進のロゴマークにSDGsが使われていることに、政府のSDGs推進円卓会議の委員も務める「SDGs市民社会ネットワーク」のメンバーからも批判と疑問の声が上がっていると指摘。「アクションプランに貧困と格差の是正を入れるべきだ」と迫りました。
そもそもSDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称で、2015年9月に国連で採択されました。
コロンビアが提案し、ケニアの外交官が外交交渉を取り仕切り、ナイジェリアの国連専門家が文書化するなど途上国の主導で作成された国際目標です。
いま人類は地球の再生能力の1・69倍の資源を消費し続けていますが、仮に世界中の人が米国と同じペースで資源を使えば地球4・97個分、日本のペースなら2・76個分も消費する計算です。ところが東ティモールのペースなら、地球0・3個分にとどまります。極端な資源浪費を続けながら、貧困と格差の解消ができていないのが現状です。
SDGs本来の目標は、地球1個分へと資源消費量を減らすとともに、世界・地域・国などあらゆるレベルで貧困と格差を減らすことです。
日本は貧困と格差の広がりが大きく、コロナ禍が社会のゆがみをさらけ出しています。それにもかかわらず、政府は貧困と格差の是正の目標を掲げない一方で、SDGsを掲げて「バイオ戦略」や「スマート農林水産業」を進めるなど、財界が望む方向に向かっています。
市民との攻防戦
「SDGs市民社会ネットワーク」の稲場雅紀氏は、SDGs自体がいわば「攻防戦」の中にあると指摘。「例えば食料問題は、バイオ技術を持つグローバル大企業が種子や遺伝子を牛耳り食料主権を独占しようとしていますが、人々の主権に基づいたSDGsをつくるのか、それともSDGsから人々の主権が奪われてしまうのか―どちらの立場でどう進めるかが問われている」と話します。
稲場氏は、「われわれのSDGsに引き寄せるための運動が必要だ」と訴えています。(土屋知紀)