2020年12月25日(金)
主張
安倍前首相不起訴
「知らなかった」は通用しない
「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)事件で、東京地検特捜部が安倍晋三前首相の後援会の代表である公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴しました。安倍氏本人は不起訴としましたが、「補填していない」という安倍氏のウソを検察として明確に認定したものです。不起訴後の記者会見で安倍氏は、ごく最近まで補填を知らなかったと主張しました。信じがたい話です。前夜祭の費用補填は公職選挙法や政治資金規正法に違反する重大問題であり、秘書の責任では済まされません。安倍氏は、「桜を見る会」疑惑の全てを隠さず語るべきです。
ウソ言い続けた事実明白
前夜祭は、首相主催の「桜を見る会」の前日に、「安倍晋三後援会」が都内の高級ホテルで開いてきたものです。参加者が払う1人5000円の費用はあまりに安く、安倍氏側が差額をまとめて支払った疑いがあるとして法律家らが法律違反を告発していました。
公設秘書についての起訴状などによれば、政治資金収支報告書の原本が保管されている2016年から19年の4年間、後援会の報告書には前夜祭の約3000万円の収支が記載されていませんでした。会費収入との差額約700万円は後援会が負担していました。
後援会の代表で実質的な会計責任者だった公設秘書は、政治資金規正法の不記載罪に問われました。後援会による費用補填は、公職選挙法で禁じられた寄付行為にあたる違法性が濃厚ですが、東京地検特捜部はその立件をしませんでした。安倍氏を不起訴にしたのは、不記載への関与を認める証拠を得られなかったとしています。
公設秘書が安倍氏の了解もなく巨額の費用を補填したとは考えられません。昨年11月、「桜を見る会」をめぐり日本共産党の田村智子参院議員が国会で質問した際、安倍氏は聞かれてもいないのに、補填を取り繕うかのような答弁をしています。安倍氏が早くから承知していた可能性は十分あります。さらに補填した資金の出所はどこか。「手持ち資金」という安倍氏の話は不可解です。
何より重大なのは、安倍氏が1年近くにわたり、一貫して「事務所は関与していない」と、国会で虚偽の答弁を繰り返してきたことです。「国権の最高機関」である国会に対し、首相がウソを言い続けてきたことは大問題です。ウソをただすのは、与野党にかかわりなく国会全体の責任です。
「桜を見る会」という公的行事に、自らの後援会員らを大量に招待し、税金を使って飲ませ食わせしたこと自体、買収行為であり公職選挙法違反です。国政私物化疑惑をあいまいにできません。
菅政権の姿勢が問われる
秘書の略式起訴と自らの不起訴を受けた記者会見で、安倍氏は秘書からの説明が事実と違った、自身は承知していなかったと言い張りました。あくまで秘書に責任を押し付けるのは、とんでもない開き直りです。安倍氏の一連の言動は国会議員の辞職に値します。
25日の衆参議院運営委員会で安倍氏は説明します。これは解明の第一歩です。菅義偉首相と自民党は、安倍氏の証人喚問を受け入れるべきです。官房長官として安倍氏の虚偽答弁と歩調を合わせ、疑惑隠しに手を貸してきた菅首相自身と与党の責任が問われます。