2020年12月24日(木)
スペイン 反緊縮予算成立
大企業・富裕層増税 医療・教育7割増
スペイン上院は22日、サンチェス政権が提出した2021年予算案を賛成多数で可決しました。3日に下院で可決された内容が無修正で承認され、成立しました。1月から施行される新予算は大企業・富裕層に増税する一方、医療・教育分野の支出を大幅に増額し、連立政権が掲げてきた反緊縮政策を実施するものとなっています。
新予算の歳入では、年収20万ユーロ(約2500万円)を超える富裕層の所得税や大企業の法人税を引き上げることが盛り込まれ、これにより680億ユーロ(約8兆5000億円)の税収増が見込まれています。
上院での可決後発表された財務省の声明は、新予算は「より多く持っている者がより多く納税する、より公正で累進的な制度の方向に前進するもの」と説明しています。
歳出では、医療費が75・3%増。新型コロナウイルス対策として初期診療や医療資材を充実させるなど医療体制の強化を図ります。教育費は70%増額し、奨学金を拡大し、「資金不足から学業をやめる学生を一人も生まないため、史上最大の予算」(財務省)を組んでいます。
子どもの貧困対策費も59%増やし、貧困世帯の子ども110万人に援助金を支給する施策が盛り込まれました。
サンチェス首相は予算成立を受けて、「スペインはついに必要な予算を手にした。100年で最悪の危機を乗り越えるための史上最も社会的な予算だ」とツイートしました。
18年6月に政権の座に就いた社会労働党(PSOE)を率いるサンチェス首相は、少数与党のため、これまでの予算案はことごとく国会で拒否されてきました。今回は、長年にわたる緊縮政策からの転換を図ることで一致し、連立政権を組んでいる左派連合ウニダス・ポデモス(UP)の支持はもとより、地方政党や小政党との交渉を重ね、初の予算可決にこぎつけました。