2020年12月24日(木)
主張
安倍前首相聴取
証人喚問で真相の徹底解明を
「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)をめぐる疑惑で、安倍晋三前首相が東京地検特捜部の事情聴取を受けました。費用補填をした事実を政治資金収支報告書に記載しなかった疑いです。首相経験者本人が検察当局から聴取されるのは極めて異例です。安倍氏はこれまで国会で、前夜祭の費用補填について繰り返し全面否定してきました。時の首相が「国権の最高機関」である国会の場で、事実と正反対の虚偽答弁を続けてきたことは重大です。衆参予算委員会で安倍氏の証人喚問を行い、真相を徹底的に解明することが急務です。
問われる虚偽答弁の責任
前夜祭は、首相主催の「桜を見る会」前日に「安倍晋三後援会」が都内の高級ホテルで開催してきました。安倍氏の地元・山口県の支援者らが「桜を見る会」と一体の行事として大量に招かれました。1人5000円とされる会費は安すぎるため、実際の飲食代との差額を安倍氏側が負担した疑いが国会などで追及されてきました。有権者への寄付を禁じた公職選挙法違反や、政治資金収支報告書の虚偽記載という政治資金規正法に反する重大問題です。
安倍氏は、会費はホテル側が設定したもので補填は一切ないと主張し、参加者が直接ホテルに会費を払っているので、政治資金収支報告書に書く必要はないなどと言い張りました。野党議員が質問で不自然な点を指摘すると、「ここで話しているのがまさに真実」と語気を強めて反論する場面もありました。しかし、東京地検の捜査などで、安倍氏側が2015年~19年の5回だけで約900万円も補填していたことが明らかになりました。安倍氏がないとしていたホテルの明細書もあることも判明しています。安倍氏の説明は明らかにうそだったのです。
安倍氏が国会で前夜祭をめぐって「事務所は関与していない」などとうその答弁をしたのは、少なくとも118回にのぼっています(衆院調査局の調べ)。
後援会の代表を務める公設第1秘書らは、補填を安倍氏に伝えていなかったなどと検察の事情聴取に述べているとされます。あまりに不可解です。昨年秋以来、国会であれだけ厳しく追及されているのに、安倍氏は秘書の話に何の疑いも持たず、ただ受け入れただけというのでしょうか。国民は納得できません。自民党が主張する非公開の議院運営委員会理事会ではなく、公開の予算委員会などで安倍氏に真実を語らせるしかありません。うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問こそ必要です。官房長官として、安倍氏の虚偽答弁をそのまま繰り返し、疑惑隠しに加担してきた菅義偉首相の責任も問われます。
疑惑にフタは許されない
公的行事「桜を見る会」に多くの支援者を招き飲ませ食わせしたこと自体、税金を使った買収であり、公選法に違反する重大な国政私物化です。疑惑全体の徹底解明が急がれます。
安倍氏の事情聴取が判明したのに続き、鶏卵生産会社前代表から500万円の現金提供された吉川貴盛元農水相(22日に議員辞職)に対して、東京地検特捜部が事情聴取していたことも明らかになりました。菅首相に近い吉川元農水相の証人喚問も不可欠です。続発する「政治とカネ」疑惑にフタをすることは許されません。