2020年12月23日(水)
主張
21年度軍事予算案
異常軍拡をやめ抜本的軍縮を
菅義偉内閣が21日に決定した2021年度当初予算案の軍事費は5兆3422億円に上り、9年連続の増額、7年連続の過去最多更新となりました。重大な問題の一つは、「敵基地攻撃」可能な長距離巡航ミサイルや同ミサイルを搭載する戦闘機の開発・取得をなし崩し的に推し進めようとしていることです。憲法に違反し、東アジア地域の軍事緊張を激化させる「敵基地攻撃」能力の保有に本格的に乗り出す危険な軍拡予算案です。
危険な敵基地攻撃能力
菅内閣は、予算案決定に先立つ18日、「ミサイル防衛」用の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、新型イージス艦2隻の建造を決めました。その際、年末までとされていた「敵基地攻撃」能力保有の結論は先送りしつつ、「島しょ防衛」を口実に、陸上だけでなく航空機や艦船からも発射できる新たな長距離巡航ミサイル=「12式地対艦誘導弾能力向上型」の開発を決定しました。21年度予算案には、開発費335億円(契約ベース、以下同じ)を計上しました。
導入に向けた調査費(17億円)を盛り込んだ新型イージス艦2隻に、長距離巡航ミサイルを搭載する検討をすでに始めたとも報じられています。
これまで進めてきたF35A戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイル「JSM」の取得(149億円)や同戦闘機の調達(4機・391億円)も盛り込みました。敵に迎撃されないよう高高度を不規則に飛ぶ高速滑空弾の早期装備化に向けた研究(150億円)なども継続します。
「いずも」型護衛艦の空母化に向けた改修(203億円)や同艦に搭載するF35B戦闘機の取得(2機・259億円)も引き続き盛り込み、「海外で武力行使できる軍隊」への変貌が図られようとしています。
「米軍再編関係経費」として、沖縄県民多数の反対の意思を踏みにじり、同県名護市辺野古の米軍新基地建設に552億円(歳出ベース)を計上したことは許されません。馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機着陸訓練(FCLP)のための基地建設に向けた費用として31億円(同)を付けているのも、地元の民意を無視するものです。
「米軍再編関係経費」は全体で2044億円にも上り、在日米軍の従業員の給与や施設建設費など「思いやり予算」2017億円、沖縄県内の米軍基地・訓練の移転費など「SACO関係経費」144億円と合わせると、4205億円にも達します(いずれも歳出ベース)。日米地位協定上どれも負担義務はなく、廃止が必要です。
コロナ禍の国民支援を
菅内閣は15日に、新型コロナ対策を中心とした20年度第3次補正予算案を決定しています。この中には、軍事費3867億円が含まれています。その7割強に当たる2816億円は、潜水艦やミサイルなどの兵器調達費を前倒しで支払うための経費です。21年度当初予算案に計上せず、補正に潜り込ませるやり方は姑息(こそく)です。
この経費を加えれば、実際の21年度の軍事予算案はさらに膨らみます。異常な軍拡路線を軍縮の方向に抜本的に転換し、コロナ禍に苦しむ国民の暮らしや営業の支援に回すことが求められます。