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2020年12月19日(土)

“コロナ便乗”人員削減

「大黒字なのに切り捨てか」

ソニー

 コロナ禍でも雇用や下請け関連企業を守る体力が十分あるはずの大企業が、次々とリストラを打ち出しています。普段なら難しいリストラを、この機にやって収益拡大をはかろうという“コロナ便乗リストラ”の様相が浮かび上がっています。(田代正則)


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(写真)ソニー本社=東京都港区

 「新型コロナの影響でリスクが顕在化しており、新たなチャレンジが求められます。場を変えて経験・知見をいかせる社員も多いと思うので、社外転身を支援していきます」

 大手電機ソニーの開発専門会社「ソニーエンジニアリング」(SEG、従業員557人)で10月中旬、在宅勤務をしている技術者約200人を集めたオンライン会議で突然、上層部から早期退職募集が告げられました。

 対象は45歳以上、勤続10年以上。会議で「希望退職の目標は?」との質問が出ても人数は言わず、「希望者全員に対応する」と最大限の退職者を追求する考えを示しました。

 技術者はその後、わずか15分の個人面談に次々と呼び出されました。廊下ですれ違っても、だれもがうつむき言葉を交わす人はいませんでした。

 面談で労働者の一人は「(退職)制度に手をあげるか」と聞かれ「希望しません」と答えました。コロナ禍で再就職先がみつかる保障などないと考えたからです。しかし、「今後のキャリアプランを考えてほしい」と再考を求められました。

 2回目の面談で、考えてきたソニー内での将来設計を説明すると「そんなことは聞いていない」と一蹴。何を答えても退職を受け入れるよう強く迫られ、3回目の面談実施を通告されました。

憤る技術者

 リストラ対象のSEGは、ぴったり密着するイヤホンをはじめ、コンサートで数万本のペンライトを連動させる装置、オンラインで音楽を録音・交流できるシステムなど個性的な製品を開発。「自由闊達(かったつ)にして愉快なる理想工場」といわれ、ソニーらしさを体現する会社だけに、「これからのソニーはどうなるのか」「その人しかやっていない仕事も多いのに、どうするのか」との声が聞かれます。

 ソニーの9月期中間決算は、“巣ごもり需要”で営業利益5461億円と上半期で過去最高。内部留保は3月末の4兆4090億円から、9月末5兆2450億円と、これも過去最高です。

 「会社は大黒字で新入社員も採用する。なのに、なぜ私たちを切り捨てるのか」と技術者の一人は憤ります。

リストラ支援会社に菅政権のブレーン

 今回のリストラ計画についてソニーは公表していません。リストラ支援会社には、菅政権のブレーン、竹中平蔵氏が会長のパソナが名を連ねます。同社は各社で労働者を退職に追い込んできました。

 ソニー労組(電機連合加盟)の松田隆明委員長は、他の事業部門でも退職募集や「派遣切り」が始まっていると指摘。「黒字リストラは許されない。技術者を大切にしてこそ、コロナ禍を乗り切る新しい発想も生まれる」と強調します。

 ソニー労組は、2008年のリーマン・ショックの際、「非正規切り」や正社員リストラとたたかった経験があり、今回も相談が寄せられています。

 ソニーは本紙の問い合わせに「グループの一部で退職募集をしているのは事実だ。目標人数を持って促進しておらず、転職を希望する人がいれば支援する」と話しています。


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