2020年12月2日(水)
主張
河井事件秘書有罪
自民党の説明責任は免れない
昨年夏の参院選広島選挙区で初当選した河井案里議員(自民党を離党)陣営の公職選挙法違反(買収)事件で、逮捕された案里議員の公設秘書について、最高裁は上告を棄却し、有罪が確定しました。検察は近く、案里議員の当選無効などを求めて行政訴訟を起こします。検察が勝訴すれば、案里議員は失職します。案里議員と夫の克行元法相・衆院議員は、地方議員らへの大規模買収事件で、ともに逮捕され公判中です。買収の原資には自民党本部から送金された巨額の資金があてられた疑惑が深まっています。自民党は説明責任を免れることはできません。
1・5億円の使途不明
公設秘書は、車上運動員に規定を超える報酬(計200万円余)を支払った公選法違反が問われました。上告棄却に伴い執行猶予付きの懲役刑が確定しました。検察側は同秘書を連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」と位置付けています。広島高検は有罪確定から30日以内に広島高裁に連座制の適用を求める行政訴訟を起こします。この裁判で、公設秘書が「組織的選挙運動管理者」と認定されれば、案里氏は議員の資格を失い、5年間は同一選挙区から立候補できません。
河井夫妻が票の取りまとめを求めて地方議員や首長ら100人に計約2900万円を提供した大規模買収事件の裁判は、案里議員の公判が年内に結審し、年明けに判決が出る見通しです。克行元法相の裁判は、地方議員らの証人調べが行われています。これらの裁判でも有罪が確定すれば、案里氏は失職します。
選挙運動員や地方議員の買収は、票をカネで買う重大犯罪です。案里議員も克行議員も、議員の資格がないのは明白です。とりわけ法をつかさどる法相だった克行議員の責任は重大です。夫妻は、買収事件について記者会見などをしていません。裁判結果を待つまでもなく、夫妻は説明責任を果たし、議員を辞職すべきです。
案里議員の選挙の際、1億5000万円にも上る破格の資金を提供した自民党本部の責任は重大です。案里氏の出馬は、克行元法相を要職に登用してきた安倍晋三前首相や当時官房長官の菅義偉現首相らの強い意向といわれます。他の参院選候補とはケタ違いの資金を提供しただけでなく、安倍氏や菅氏が応援に駆け付けました。安倍氏の秘書らも地元を回るなどして、選挙を支えました。
投じられた資金の大半、1億2000万円は税金で賄われる政党助成金です。にもかかわらず、先日公開された政治資金収支報告書などでも、資金の使われ方は明らかになっていません。自民党本部の資金が買収の原資になった疑いは消えません。自民党本部には“政治的連座制”が問われます。頬かむりすることは許されません。
「桜」のウソは許されない
安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭でも、安倍氏側による費用の肩代わりが明らかになるなど、新たな疑惑が浮上しています。安倍氏が1年にわたって国会でウソを言い続け、菅氏もそれをおうむ返ししてきたことは大問題です。
「桜」や河井夫妻による大規模買収事件を含め、「政治とカネ」をめぐる疑惑の徹底究明が急務です。菅政権は、解明に背を向け続ける姿勢を改めるべきです。