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2020年11月19日(木)

フェイクの果ての「赤旗」攻撃

菅官邸を擁護する佐藤優氏の寄稿

 元外務官僚で作家の佐藤優氏が『文芸春秋』(12月号)への特別寄稿で、菅義偉首相による日本学術会議への人事介入を報じた「しんぶん赤旗」のスクープが、事態を混乱させた原因であるかのように書いています。「文春オンライン」も、「赤旗のスクープで交渉の余地がなくなった」との見出しで紹介記事を載せています。

 その趣旨はこうです。

 ―「赤旗」に出なければ、任命拒否の内示を受けた時点で学術会議の山極寿一会長(当時)がすぐにかけ合えば、「官邸と学術会議の間で交渉の余地はいくらでもあった」。

 ―菅首相や官邸中枢が主導的な役割を果たしたと思えず、“もらい事故”だった。

 ―菅首相には「学問の自由」に介入する意図はなかった。

意図的な“事件”

 事実はどうか。山極氏の会見(10月1日)によると、任命拒否の連絡があったのは9月28日の夜です。会長退任の2日前でした。理由について内閣府に聞くと、返事は「いっさい答えられない」。そこで山極氏は文書で菅首相に返答を求めたものの、任期中に返事がなかったといいます。

 「赤旗」のスクープは10月1日付です。つまり記事が出る前から、山極氏は菅首相に説明を求めていたのに、官邸からは返答がなかったのです。官邸はもともと学術会議に「交渉の余地」を与えていなかったといえます。

 官邸中枢が主導的な役割を果たしていないという主張は、菅首相自身の国会答弁とも異なります。この間の答弁によると、首相就任直後に加藤勝信官房長官、杉田和博官房副長官に学術会議への懸念を伝え、9月22日か23日に菅首相自身が6人を外すことを「判断」したといいます。その後、24日に内閣府が決裁案を作成し、28日に首相が決裁しました。

 菅政権は学術会議の推薦に基づき首相が「形式的に」任命するという確定した法解釈をこっそり覆し、任命拒否をしました。専門家からは法治国家を破壊するクーデター的手法と指摘されています。“もらい事故”ではなく、首相が意図的に引き起こした“事件”というべきでしょう。

 佐藤氏を知るメディア関係者は、「官邸の代弁をしている」といいます。佐藤氏は「赤旗」スクープについても、「官邸からすれば、これは“スクープ”ではなく、“情報漏洩(ろうえい)”」と述べ、情報源が学術会議事務局員だと官邸目線で決めつけています。

 スクープの端緒は、松宮孝明・立命館大学教授が、任命拒否されたと9月29日にフェイスブックで公表したことです。この事実について「赤旗」は隠していませんし、公表もしています。『文芸春秋』と同時期に発売された『世界』(12月号)は、松宮教授が公表していると正確に記しています。

「問題の本質」は

 「赤旗」に佐藤氏から、事実関係について問い合わせはありません。当事者に取材せぬまま、“情報漏洩”と不正に情報を入手したかのように虚偽の内容を書いています。

 根拠を示さず、事実をゆがめて、政権の行為を正当化する―。典型的なフェイクニュースの手法です。学術会議問題では、与党政治家らがネットでデマを流し、あたかも会議側に問題があるかのように“世論誘導”をしています。佐藤氏の寄稿も、それらと同一線上にあります。

 佐藤氏の寄稿は「権力論 日本学術会議問題の本質」と銘打っています。フェイクニュースは「問題の本質」をゆがめます。「問題の本質」は、菅首相が違法違憲の人事介入で「学問の自由」を侵害したことにあるのですから。(社会部長 三浦誠)


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