2020年10月29日(木)
2020米大統領選
両陣営 労働者層に焦点
あと5日 激戦州ペンシルベニア
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【ピッツバーグ=池田晋】投票まで1週間を切った11月3日の米大統領選に向け、トランプ大統領(共和党)と民主党バイデン候補(前副大統領)の両陣営は、激戦州で最終盤の票固めを展開しています。勝敗のカギを握るとみられているのが、毎回接戦となる南部フロリダ州に加え、民主党の地盤でありながら4年前にわずかの差でトランプ氏が勝利したミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの3州。労働者層からの支持を奪回すべく、民主党は今回、進歩派も結集した総力戦です。
かつて炭鉱・鉄鋼生産の中心地として栄えたペンシルベニア州ピッツバーグ市。4年前にトランプ氏が製造業・地域雇用の回復を掲げて民主党から労働者層の票をさらった中西部「ラストベルト」(さびついた工業地帯)の一角を占めます。
ピッツバーグに住む黒人女性デボラ・ホワイドヘッドさん(67)は「このパンデミック下、時給8ドル(約830円)そこらで誰が家族を養えるというのか。もはや犯罪並み」とバイデン氏の最賃引き上げを熱烈に支持。40歳の白人男性も「トランプのように石炭・石油産業を推進しても、古き良き時代は戻らず、雇用は先細りするだけ」とバイデン氏の再生可能エネルギー転換での雇用創出策に期待を寄せました。
オバマ前大統領による同州での今選挙戦の初遊説(21日)に続いて、24日には同市郊外で開かれたバイデン陣営の集会に、進歩派のサンダース上院議員が応援で参加しました。
バイデン陣営「労働者の味方」
最賃15ドルなど進歩派政策に言及
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新型コロナウイルスの拡大の中、感染防止のために社会的距離を確保することもしない大規模集会を開くトランプ陣営とは対照的に、バイデン陣営は、車に乗ったまま参加できる「ドライブイン」集会を各地で開催しています。
会場となった溶鉱炉の跡地を背景に、サンダース氏は応援演説で、最賃15ドルへの引き上げや男女同一賃金といった政策にバイデン氏が賛成していることに触れ、「中産階級の成長には、労組運動の拡大が必要だとバイデン氏は理解している」と労働者・組合の味方である点を強調。聴衆はクラクションと拍手で応えました。
バイデン氏が労働者階級・地方都市の出身である点を前面に押し出す一方、トランプ氏は、バイデン氏が47年間もワシントンで政治に関わりながら、「雇用を海外に流出させてきただけ」などと既得権益層の政治家だと攻撃しています。
バイデン氏自身は最近、自らの演説の中で製造業の再生や雇用創出だけでなく、最賃15ドル引き上げといった、進歩派が掲げてきた政策にも言及するようになっています。こうした労働者層の重視姿勢を象徴するのが、「スクラントンVSパークアベニュー」という打ち出しです。今回の大統領選が、バイデン氏の生まれ故郷で「ラストベルト」の一角を占めるペンシルベニア州スクラントン市と、トランプ氏のような富裕層が住むニューヨーク・パークアベニューの対決だという意味を込めています。
24日のピッツバーグ近郊の集会でも、「スクラントンVSパークアベニュー」と書かれたバイデン氏の写真入りTシャツを着た若者や女性が多数参加していました。