2020年10月19日(月)
パソナに市職員1000人派遣 福岡市
税金10億円で委託の業務
市長・会長は首相と会食の仲
福岡市が新型コロナウイルス対策で大手派遣会社パソナに計10億円余で委託した業務に、のべ1000人超もの市職員が手伝いに派遣されていたことが日本共産党市議団の調べで分かりました。市はパソナに委託費の返還を求めておらず、特別扱いが問題になっています。(矢野昌弘)
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市は返還を求めず
福岡市職員による業務の肩代わりが明らかになったのは、すべての国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金事業」(契約額7億573万円)と今年度の「生活困窮者自立相談支援事業」(同3億2191万円)です。
「給付金」では、市の市民局長が教育委員会や農林水産局、住宅都市局など他局に援助を頼んでいました。
市民局長の依頼文は「委託業者に加え、局内の職員を動員し、対応しているところですが、(中略)処理が追い付かない状況です」と、深刻な人手不足を訴えています。
7日の市議会で、日本共産党の中山郁美団長が追及。市は、市民局外の市職員でのべ577人がパソナの応援に派遣され、残業代が335万円にのぼると答弁しました。
しかし、実態はそれにとどまりません。中山団長は「私たちの調べでは、市民局とその他の7局からのべ1000人以上の市職員が本来の職場を離れパソナの作業場で業務を行った」と指摘。さらに、他局への依頼文に書かれた市職員の従事内容を取り上げ「契約書で定められたパソナがやるべき業務そのものを市職員に手伝わせた」と追及しました。
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「相談支援事業」でも、住居確保給付金支援業務に市職員のべ654人がパソナの応援に派遣されたことが明らかになりました。
「必要人員を確保できなかったということはパソナの契約違反ではないか。委託費の返還を求めよ」と迫った中山団長。これに対し、高島宗一郎市長は「委託費の返還を求める必要はない」と答弁しました。
自治体業務の民間委託の問題に詳しい尾林芳匡弁護士は「多数の市職員が駆り出されてやっているのであれば、それほど多額の委託料が必要だったのか、市の財政を有効に使う点からみて疑問だ」と指摘します。
福岡市におけるパソナやグループ会社との過去5年間の契約総額は14億円余でした。今年度は、すでに8月末時点で契約金額が確定したものだけでも計15億1000万円余の委託契約をしています。
同市と同社の関係は―。菅義偉首相の政策ブレーンでもあるパソナの竹中平蔵会長は、菅首相と共に国家戦略特区の諮問会議のメンバーです。戦略特区の区域会議が福岡市で開かれた際、竹中氏と高島市長は同席。高島市長は特区を熱心に推進しています。両者はそれぞれに、「規制緩和」を進める菅首相と食事をするなどの共通点もあります。
中山団長は「ずさんな契約でパソナに多額の利益をもたらし、苦境にある市民への給付は大幅に遅らせ、その尻拭いに市職員を大量動員。市民や市職員を犠牲にしてパソナだけを思いやった市長の契約者責任は重大だ。地方公務員法違反の疑念も残る」と指摘します。
本紙はパソナに取材を申し込みましたが、18日夕までに、同社からの回答はありません。