2020年10月18日(日)
公共の放送でデマ 許されぬ
右派論者が学術会議攻撃
日本学術会議が推薦した6人を菅義偉首相が任命拒否した問題で、菅政権・自民党の論点すり替えに呼応する形で、学術会議の実態をゆがめるデマなどが、右派論者らによってテレビ番組などで発信されています。
論点そらす
その代表格は元大阪市長の橋下徹氏。学術会議が戦前の反省の上に立って、過去3度にわたって「軍事研究せず」の声明を出していることが気に食わないようで、自身のツイッターで、「学術会議は軍事研究の禁止と全国の学者に圧力をかけているがこちらの方が学問の自由侵害」(1日)と、学術会議を攻撃してきました。
レギュラーコメンテーターを務めるフジ系「日曜報道 ザ・プライム」(11日)では、軍事研究をやるかやらないかは、科学者自身が判断することとして、「それが本来の学問の自由」とのべ、「団体としてこういう声明を出すのは学問じゃない。学術会議が政治介入してきている」と論点をそらしました。
橋下氏の言い分は「学問の自由」とは何かをわきまえないものです。「学問の自由」とは、研究・教育への国家権力の介入からの自由だからです。
橋下氏は、12日のTBS系「グッとラック!」でも、「学術会議は政府の機関。民間の機関だったら好き勝手やっていい。公の機関なので、国民主権の元、国民の声を代弁する政治が関与しなければならない。政治の暴走ばかり言うけど、学術会議の暴走だってあるんですよ」と荒唐無稽な議論で菅政権をかばいました。
ヘイト典型
『週刊新潮』(10月15日号)で、「『学術会議』にモノ申した菅首相の英断」と持ち上げているジャーナリストの桜井よしこ氏は14日、BSフジの「プライムニュース」に出演。学術会議設立の経緯をゆがめ、「反日的なことを成し遂げるという使命が負わされている」「反日的な研究をさせている」などと事実にもとづかない発言を繰り返しました。政権を批判するものは、なんでも「反日的」と片づけるのは、ヘイト(差別扇動)の典型です。
フジ系情報番組「バイキングMORE」(5日)では、同局上席解説委員の平井文夫氏が学術会議の会員について、「その後、学士院というところに行って、年間250万円年金がもらえるんですよ。死ぬまで。皆さんの税金から」などと発言。翌日の放送でアナウンサーが「誤った印象を与えた」と謝罪したものの、本人は謝罪も訂正もしていません。
重大なことは、こうしたデマ発言が公共の電波によって流され、誤った情報がネット上で拡散されていくことです。こうしたことを見越したうえで、影響力のある立場を利用して、フェイク情報を発信することは許されません。(藤沢忠明)